最終更新日:  公開日: AR・VR・MR

「XR」に関する世界最大のエキスポ「AWE USA2026」視察 速報サマリーNo.2

「XR」世界最大のエキスポ「AWE USA2026」視察 Day2速報

こんにちは、サービシンクの名村です。
昨日から主題のアメリカのロサンゼルスで開催されている「XR」の関する世界最大のエキスポ「AWE USA2026」に来ております。

本日も様々なカンファレンスを視察してきました。多くのセッションの中で弊社としてはXR領域の中でも主に「AR」領域、そして更にはWeb制作・システム開発を主領域としているサービシンクとしては「AR✕Web」という視点での視察結果となっているのはご了承をお願いいたします。


AWE USA2026 開催概要

会期 2026年06月15日 ~ 2025年06月18日
開催地 ロングビーチ / 米国 / 北米
会場 Long Beach Convention Center
出展対象品目 空間コンピューティング、クロスリアリティ(XR)、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)、AI、バイオインターフェース、ハプティクス、5G、ストリーミング、スタートアップ、投資
主催者 AWE XR, LLC
業種 情報・通信/通信、情報処理、コンピュータ
情報・通信/新聞、放送、映像(映画、フォト)
趣味・教育/玩具、遊戯用具、ゲーム用品
イノベーション・スタートアップ/イノベーション・スタートアップ
ウェブサイト https://www.awexr.com/usa-2026

開催は2026年6月15日からですが、初日はウェルカムパーティーなどが主でもあったので、セッションが具体的に開催される2026年6月16日より参加してきました。

2026年6月17日 視察セッション目次

  • PANEL: XR and AI at Work: From Real-Time Guidance to Edge Deployment(パネルディスカッション:仕事の現場におけるXRとAI ― リアルタイム作業支援からエッジ実装まで)
  • The Missing Link in Smart Glasses(スマートグラスに欠けている「ミッシングリンク」)
  • AI Glasses Without Compromise: The PinTILT Solution(妥協なきAIグラス ― PinTILTというソリューション)
  • Create Social Stories: LBE Marketing & Community-Building(ソーシャルな物語を生み出す ― LBEマーケティングとコミュニティ形成)
  • Builders Lightning Round #1(ビルダーズ・ライトニングラウンド #1(開発者によるショートピッチ大会))
  • Building Content for Meta AI Glasses(Meta AIグラス向けコンテンツ開発)
  • SPECS: The Power of a Fully-Integrated AR Stack(SPECS:完全統合型ARスタックがもたらす力)
  • PANEL: glTF / USD Interoperability Workflows(パネルディスカッション:glTF / USD 相互運用ワークフロー)
  • Creating a Website Environment for Apple Vision Pro(Apple Vision Pro向けWebサイト環境の構築)
  • Beyond XR: The Shift Toward Spatial, Immersive Digital Experiences(XRの先へ ― 空間的・没入的なデジタル体験へのシフト)
  • PANEL: Beyond Impressions: Measuring Phygital Fashion and XR Brand Play(パネルディスカッション:インプレッションの先へ ― フィジタル・ファッションとXRブランド施策の効果測定)
  • Unlocking Presence: How AI Glasses are Changing the Way We Live(「プレゼンス(存在感)」を解き放つ ― AIグラスが変える私たちの暮らし方)
  • Where XR Meets Real Science: Unlocking Insights in Disaster, Space Weather & Earth Observation(XRが本物の科学と出会う場所 ― 災害・宇宙天気・地球観測における知見の解明)
  • 17th Annual Auggie Awards and Hall of Fame Ceremony(第17回 Auggie Awards(オージー・アワード)授賞式 & 殿堂入りセレモニー)

PANEL: XR and AI at Work: From Real-Time Guidance to Edge Deployment(09:00 AM - 09:55 AM 視察:名村)

Dell TechnologiesとNVIDIAによるパネル「XR and AI at Work: From Real-Time Guidance to Edge Deployment」を聴講してきました。テーマは医療・生命科学という、一見すると弊社の「AR×Web」とは離れた領域です。しかし聴き終えて強く感じたのは、むしろこのセッションは、弊社が積み上げてきた仮説が、医療という極限環境で実証されている事例だったということでした。

第一に:情報への到達経路を組み替える

ピッツバーグ大学/UPMCの内視鏡的頭蓋底手術の事例では、内視鏡映像・患者バイタル・術中ガイドを、術者の視界内の適切な位置にMRで配置していました。従来、手術室には25〜32台ものモニターが並び、術者は視線をあちこちに動かして情報を「探し」ていました。これを空間内に再配置する発想は、弊社が「ARは表現を変える技術ではなく、情報アクセスの構造を組み替える技術」と整理してきた論点そのものです。

第二に:認知負荷の低減として定量化されている

これはNASA-TLX(主観的作業負荷指標)を用いて測定されていました。登壇者は、MR化によって分散注意(split attention)が減り、認知負荷が下がったと報告しています。ここは強調したい点です。弊社は過去記事で繰り返し「視界を占有しない」「情報量を減らす」「迷わせない」ことが、優しさではなく失敗回避の設計条件だと書いてきました。手術室という、ミスが許されない現場で同じ原則が測定値として裏付けられたことは、Webアクセシビリティ(WCAG/JIS X 8341)が長年向き合ってきた原則とも構造的に一致します。

第三に:操作を前提にしない入力設計

術者は無菌状態にあり、マウスやキーボードに物理的に触れられません。そのため音声とジェスチャーでウィンドウ位置を制御し、AIエージェント(VLM)が術野を解析して「遮ってはいけない領域」を避けて表示位置を自動で決めていました。これは弊社が「UI/UXは人に操作させる方向から、システム側が理解を支援する方向へ移行する」と予測してきたことの、明確な実装例です。

第四に:低遅延をどう達成するか

手の動きと映像のズレを最小化するため、また患者データを外部に出せないという規制上の理由から、処理はローカルのGPU上で行われていました。一方でNVIDIAは今回、デバイス側で処理を完結させず低遅延ブリッジでエッジ/クラウドの計算資源に繋ぐ「NVIDIA XR AI」というOSSを発表しています。「重い処理はデバイスから逃がし、グラス側は表示に徹する」という、弊社が通信インフラの進化を前提に予測してきた構成が具体化しつつあります。

そして最も可能性を感じた、スタンフォードの「Lab OS」

博士課程レベルの実験を、来たばかりの学生がAR越しの手順ガイドで初週からこなせるという事例でした。表示にはおそらく専用アプリが使われていますが、こうした空間上のマニュアル提示こそ、本来は汎用的なWeb技術で達成すべき領域だと聴きながら感じていました。更新性・検索性・再訪性が前提となるマニュアルは、Webが最初から向き合ってきた運用構造そのものです。個人情報を外部に置けないという制約は別途あるにせよ、専用アプリからWeb標準へ移行していく筋道は、PC上のワープロソフトがGoogle Docsへ変化した過程と重なります。

総括すると、ドメインは医療でしたが、現実空間への情報配置、認知負荷の低減、操作を前提にしない入力、低遅延、そして専用アプリからWeb技術への移行可能性 —— いずれも弊社の「AR×Web」の中心論点と強く接続するセッションでした。


The Missing Link in Smart Glasses(10:00 AM - 10:25 AM 視察:藤原)

    Applied Materials の Paul Meissner が、スマートグラスがなかなか普及しなかった理由を「統合(integration)の不足」に求め、自社の統合型ビジュアルシステム「Sense」を発表したセッション。

    足りなかったのは、技術ではなく「統合」

    • スマートグラスは長年「未来」であり続けたのに来なかった。理由は革新の不足ではなく統合の不足。この 10 年、業界は部品を一つずつ進歩させてきたが、それらは別々に作られてきた
    • いちばん難しい「全部を協調させる」工程が常に最後に回され、そこで日程が遅れ、コストが膨らみ、UX が妥協される
    • 明るさ・鮮明さ・電力・重量は別々の課題ではなく一つの課題で、まとめて解くべき。部品の集合ではなく「系(システム)」として設計する、という立場

    ブルネレスキのドームと iPod

    主張を二つの逸話で補強した。

    • フィレンツェの大聖堂は、最高の職人と材料を集めてもドームを架けられず、約 100 年「穴」のまま雨が降り込んでいた。1418 年、金細工師ブルネレスキが、二重殻・ヘリンボーンの煉瓦・自立構造・引張りの鎖・資材を運ぶ揚重機という統合的な解を出し、設計・構造・材料・施工・物流をまとめて設計。20 年かけてドームが立ち上がった。「一つの発明」ではなく統合の勝利だった
    • iPod も同じ。Apple の John Rubinstein は「ポケットに入る音楽」を一度は不可能と棚上げしたが、東芝の 1.8 インチ HDD(2001 年)で数千曲が入ると気づき、検索のためにスクロールホイールを生んだ。Jony Ive いわく、突出した単一の発明があったのではなく、エンジニア・製造・サプライチェーンを束ねる「設計プロセス」こそが製品を作る

    なぜ AI に「統合」が要るか

    • AI を最大限効かせるには、人がグラスを四六時中かけている必要がある。そのためには普通の眼鏡に近い、軽くて自然な形でなければならない。技術が「見えなくなる(invisible)」ことで、はじめて AI が生きる
    • 例として Meta の Ray-Ban 系。最初の製品は 30 万ユーザーだったが、より統合され装着性と実用性が増した次の製品は 1,000 万ユーザーへ伸びた
    • 一方で「catch-22」がある。最良の AI 体験を作るにはハードの能力を知る必要があり、ハードを作るには狙う AI 体験を知る必要がある。どちらも未成熟。顧客は「AI を作りたい」と来るのに、ハードの話になると「部品の袋」を渡され、自分で組み合わせ方を考えさせられる

    「Sense」:統合型のアンビエント・ビジュアルシステム

    • Sense は、最先端の導波路に、e-ink・カバーガラス・度付き(処方)技術・ライトエンジンを協調設計(co-optimize)したもの。最良の形・電力・コストと、最速の市場投入を狙う
    • 直近 2 日で主要パートナーとの提携を発表。EssilorLuxottica(Ray-Ban/Oakley/Transitions を持つ)とは長期の共同開発契約を結び、Santa Clara で共同開発を開始
    • Qualcomm とは設計スタジオで協業。ブースに初期リファレンスデザインが 2 種。単眼=視野角 20 度・LCoS ライトエンジン・50g、両眼=マイクロ LED ライトエンジン・55g。いずれも量産パートナー経由で、最新の Qualcomm チップを使う

    Applied Materials の「統合力」

    • Applied Materials は約 60 年の歴史を持つ半導体製造装置の最大手。1980 年代、配線の電子移動(electromigration)問題を、専門家の個別最適では解けず、系として統合する発想(圧力を変える二段の搬送チャンバー、保守しやすいチャンバー)でプラットフォーム化した。30 年以上経った今も世界中の先端工場で主力
    • その統合力を AR へ。ウェハーレベルのプラットフォームを導波路から始め、パッケージング技術でセンサーを統合し、ライトエンジンも低コスト・高効率に協調設計する
    • 顧客との共創のため、Santa Clara に 40 億ドルの拠点、先週は Singapore にパッケージング拠点を開設。Singapore の量産ラインから最初のウェハーが出たことを実演で示し、年あたり数百万枚の導波路を生産できる能力と顧客のコミットを背景に、今後数年で需要 400% 増の計画を立てているとした。「Sense は待つものではなく、もうここにある。これが我々の 1418 だ」と締めた

    「The Missing Link in Smart Glasses」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    スマートグラスがなかなか「来なかった」理由を、技術の不足ではなく「統合の不足」に求めた整理が、視点として腹落ちしました。各社が部品ごとに進歩させてきたものの、それを一つの系としてまとめ上げる最後の工程でつまずいてきた、という見立てです。ブルネレスキのドームや iPod のたとえも効いていて、「一つの飛躍的な発明ではなく、設計・製造・サプライチェーンを束ねるプロセスこそが製品を作る」という主張は、もの作り全般に通じると感じました。半導体の製造装置で 60 年やってきた会社が、その統合力をそのまま AR の導波路や量産に持ち込む、という立ち位置にも説得力があります。目を引く体験の話が多い会期の中で、「技術が見えなくなってはじめて AI が生きる」という土台側の視点は、かえって強く印象に残りました。


    AI Glasses Without Compromise: The PinTILT Solution(10:26 AM - 10:32 AM 視察:名村)

    LetinAR社のCEO・Jae-hyeok Kim氏による「AI Glasses Without Compromise: The PinTILT Solution」のレポートをお届けします。
    先に正直に書いておくと、このセッションは弊社の主軸である「AR×Web」、つまり情報設計やUI/UX、Webコンテンツの表示場所としてのAR空間という話とは、直接重なる部分は多くありませんでした。 LetinAR社が提示したのは、スマートグラスに表示を載せるための「光学モジュール」という、いわばデバイス内部の一部品の技術だったからです。

    ですが、これを「ハードウェアの部品紹介」として聞き流すと本質を見誤ると思いました。むしろ弊社が以前から述べてきた「ハードウェアは体験を派手にする主役ではなく、設計側が守るべき制約条件の集合になりつつある」という論述の、まさに最上流の話だったという訳です。

    セッションの要旨

    Kim氏の主張は明快でした。AIスマートグラス市場は「ディスプレイなし(screenless)」が大多数を占めている、と。表示を載せようとすると、日常使いの眼鏡に見えないほど分厚くなるか、単色表示に留まるか、フルカラー化すると高価になりすぎる。この三つのトレードオフは、すべて光学モジュールに起因している、というのが氏の問題提起でした。

    PinTILTはプラスチック光学素子でこれを解こうとする技術で、薄型・軽量・フルカラー・省電力・中価格帯を同時に狙うとしています。AT&T(ヘルメット)、NTTドコモ(産業用)、Dynabook(ウェアラブル表示)といった量産実績が紹介されました。
    そして最も印象的だったのが、登壇後の質疑で「ディスプレイ性能の中で大量普及に最も重要な要素は何か」と問われたKim氏が、「最も重要なのはデザインだ。人は性能ではなくファッションで眼鏡を買う」と即答した点です。

    Web視点での読み解き

    この「デザイン優先」という回答は、弊社が過去記事で繰り返してきた論点と構造的に一致します。AR体験がスケールするかどうかは、まず「日常的に装着し続けられる筐体か」という物理条件で決まる、ということです。どれだけ優れた情報設計やWebコンテンツをAR空間に載せようとしても、そもそも装着され続けないデバイスの上では成立しません。

    つまりPinTILTのような光学技術は、我々Web側が議論している「AR空間にどう情報を見せるか」という問いの、さらに手前にある前提条件そのものです。表示が薄く・軽く・フルカラーで・安価になって初めて、その上で「何を表示し、何を表示しないか」というWeb側・情報設計側の勝負が始まる、という訳です。

    その意味で本セッションは、弊社の主戦場の話ではないものの、その主戦場が立ち上がるための土台が今どこまで来ているかを確認できる、価値のある一次情報でした。


    Create Social Stories: LBE Marketing & Community-Building(11:25 AM - 11:50 AM 視察:藤原)

    VR 脱出ゲームを世界 約 250 拠点に提供する vrCAVE の 2 人が、LBE(ロケーションベース・エンターテインメント)の集客とコミュニティづくりの実務を語ったセッション。vrCAVE は約 10 年、フリーローム(歩き回れる)型の社会的な VR 体験を、Pico/HTC/Quest などハード非依存で提供している。客層はゲーマーではなく家族・10 代・祖父母・友人同士で、多くが VR 初体験。だから普通のゲームとは集客の勝手が違う、という前提から始まった。

    テックではなく「体験」を売る

    • 客はヘッドセットのスペックに関心がない(追っているのは 1 割ほど)。求めているのは「一緒に過ごす良い時間」。だからテックは忘れろ
    • 売るのは体験・冒険・思い出。ピンボールやパックマンの昔から、人は「家ではできない体験」に金を払って出かけてきた。VR はその手段(medium)にすぎない
    • 検索も同じで、客は「近くの VR」を探すのではなく「近くで楽しいこと」「今週末の予定」を探す。広告は技術でなく体験で打て。会場の質疑でも「『ゲーム』と呼ぶな、体験(adventure)として売れ」と補強された。登壇者の標語は「Sell the scream(悲鳴を売れ)」

    マーケの前に、まず「レビュー」

    • 集客を語る前に商売の土台を整える。LBE はレビュー 4.0 が最低ライン。3 点台だと客は「何か問題が?」と身構える
    • 5.0 を狙う価値は大きい。4.9 と 5.0 が並ぶと、客の 70〜80% は 5.0 を選び、4.9 の店は見すらしない。Amazon がレビューに金を払うのも、購買への効きを知っているから
    • すべてのレビューに、とくに否定的なものにも、防御的にならず返信する

    来店前から帰った後まで「動線」を設計する

    • マーケの前に体験全体を設計せよ。建物の外観・駐車・ロビーの第一印象(ポスター、窓の TV、照明が点いて開いて見えるか)から、オンボーディング(=開発者でいうチュートリアル)、ゲーム後の CTA(再来店の誘い、団体・法人には「友人・家族を連れてくれば 20% 引き」)まで通しで考える
    • スタッフが鍵。全ゲーム・全パズルを把握し、楽しめていない客を察してさりげなく助ける。終われば「物理現実へお帰りなさい」と迎え、再来のコードを渡す。CEO 曰く「delegate and elevate(任せて、引き上げる)」。製品を好きな人を雇い、訓練して権限を与える
    • ゲーミフィケーション。オーストリアの加盟店は、スタンプごとに景品(無料ゲーム・割引・ポップコーン)、最後まで貯めると壁に写真+恒久 20% 引き、という常連づくりが巧み

    集客ファネルと口コミ、予約 UX

    • ファネルは「ほうれん草」。最初は大量でも、煮詰めると残りはわずか。新規の初回が最も難しく高コスト、リピートは安い(スタンプカードが効く)。ターゲットは絞れ。プレイヤーの 70% は半径 5 分圏内で、広く撒くと金の無駄
    • SEO から AEO/GEO へ。AI アシスタント向けの最適化が要る。自社サイトの出来だけでなく、「誰がどこで自分を語っているか(Reddit・SNS など)」も評価対象。AI に尋ねたとき・AI 検索結果で上位に出るか
    • 最大の武器は口コミ。ただし自然発生せず、手間(boots on the ground)が要る。「事業を回す 1 時間につき 1 時間はマーケに使う」くらいの覚悟。信頼する友人の薦めが最強の後押し
    • 最大のボトルネックはサイトと予約。「予約」ボタンをどこにでも置き、次に何をすべきか一目で分かるように。スマホでも大画面でも崩れないこと。カゴ落ち 7 日後・来店後のお礼&レビュー依頼・レビューで 20% 引きなど、一度組めば放っておける段階メールも有効

    フラットな素材で VR をどう見せるか

    • VR は平面素材で魅力が伝わりにくい。だから「人が何をしているか」を見せる。ヘッドセット姿で突っ立つ写真ではなく、弓ゲームなら手に弓を合成し、ゲーム内の場面に置く
    • 悲鳴の出る瞬間は決まっている。ハロウィンイベント(10 分の「Hospital Horrors」など)で全員の悲鳴を録り、30 秒に繋げば宣伝動画。Google の好レビューはそのまま文字広告になる。ヘッドセットを外して現実に戻るあの瞬間も画になる
    • VR 中はスマホがしまわれて何も生まれない。アリーナの隅に三脚を置き、客のスマホを載せてもらう。メール取得や QR ステッカー、常連と仲良くなることも忘れずに。インフルエンサーは VR/ゲーム系より地元のライフスタイル系に DM し、本気で好きだと伝わることが大事

    「Create Social Stories: LBE Marketing & Community-Building」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    XR の技術トレンドとは毛色が違い、実際に VR 施設を回している現場の集客ノウハウが詰まった、実践的なセッションでした。いちばん刺さったのは「テックを売るな、体験を売れ」という点です。客はヘッドセットのスペックに関心がなく、求めているのは「一緒に過ごす良い時間」なので、検索も「近くの VR」ではなく「近くで楽しいこと」で探す。作り手ほどスペックに目が向きがちなので、耳の痛い、それでいて納得する話でした。レビューをまず整える、来店前から帰った後までの動線を設計する、といった基本の徹底も実務的です。個人的に気になったのは、SEO から AEO/GEO(AI 検索・AI アシスタント向けの最適化)へ、という指摘です。小さな VR 施設ですら「AI に尋ねたとき上位に出るか」を気にし始めている、というのは、Web 全体の流れを象徴しているように感じました。XR コンテンツは広告だけで良さを伝えるのが難しく、体験してもらわないと魅力が伝わりにくい。だからこそ口コミが効く、という話には実感を持って頷けました。


    Builders Lightning Round #1(12:00 PM - 12:45 PM 視察:名村)

    「Builders Lightning Round」を視聴しました。これはBuilders Programに採択された個人クリエイターやスタートアップが、2分間でプロダクトを売り込むピッチ大会です。
    ただこのセッションは、弊社が最優先で追っている「ARメガネ上でのWeb表示・Web技術の融合」と直接重なる内容は、ほとんどありませんでした。 登壇したのは「CAD自動化AI」、「編み物学習XR」、「ゲーム改変プラットフォーム」、「AIスタディコーチ眼鏡」、「AR広告ディスプレイOS」、「子どもの落書きを3D化するXR体験」など多岐にわたり、デバイスもMeta QuestやSnap Spectaclesを前提としたMR/パススルー系が中心でした。

    「装着しない側」へ回帰する声が出始めた

    総括として一点、強く引っかかったものがあります。

    Staxelというチームの主張です。彼らは「ユーザーに何かを装着させる」方向に業界全体が進んでいることに対し、カメラとミニPCだけで既存ディスプレイを操作対象に変え、装着物をゼロにするという逆張りを掲げていました。「最も高性能なデバイスはすでに手元にある=あなたの手だ」という締め方です。

    これは弊社が昨年の総括で書いた「なぜハードウェア依存のAR体験はスケールしないのか」という論旨と、構造的に同じ問題を別角度から突いています。装着デバイスは進化していますが、装着するという行為自体が普及の摩擦であり続けている。その摩擦を回避しようとする動きが、スタートアップの実装レベルから出てきたという訳です。

    わずかに見えたAR×Webのメタ要素

    AR×Webという観点で唯一拾えたのが、ゲーム改変プラットフォーム「Remix Reality」でした。彼らはスマホ側で編集した内容が、コードもデプロイも不要でリアルタイムにSpectacles側へ反映される仕組みを実演していました。
    これは表現の話ではなく、コンテンツの更新と差し替えを運用前提に置くという発想です。昨年私は「AR体験は一度作って終わりでは成立せず、作り直し・差し替え・組み替えが前提になる。これはWebが最初から向き合ってきた運用構造と一致する」と書きました。今回その運用構造が、個人開発のデモという最も泥臭いレイヤーで顔を出していたことは、メタな指標として記録しておく価値があると考えています。

    まとめ

    繰り返しになりますが、このセッション自体は弊社の主軸であるAR×Webの本丸ではありませんでした。ただ、「装着させない方向への回帰」と「更新を運用前提に置く設計」という2点は、弊社がこれまで述べてきた論旨を裏付ける材料として確かに存在しました

    Webサイトの表現先が空間へ移っていくという見立てを、今回のような周辺セッションからも補強していきたいと思います。。


    Engineering the Impossible: Photonics Platforms for High-Volume Manufacturing of Invisible AI Eyewear(01:00 PM - 01:25 PM 視察:名村)

    このセッションは、弊社が主軸に据える「AR×Webコンテンツの表示」「Web技術の融合」という論点と直接合致する部分は少なかったです。

    内容の中心は導波路(waveguide)の光学設計、輝度(9,200nits/lm)、レインボー(虹色のにじみ)除去、50g以下への軽量化、度付きレンズ対応、そしてQualcommやGlobalFoundriesと組んだシンガポールでの量産体制といった、ARグラスの「部材・製造」レイヤーの話でした。Web制作者がコンテンツを置く「表現層」から見ると、二段も三段も下の物理層の話です。

    「Invisible(見えない)」と「Intuitive AI」 という設計思想

    ただ、それでも私が注目したメタ要素が一つあります。それは登壇者が繰り返した 「Invisible(見えない)」と「Intuitive AI」 という設計思想です。
    Godet氏は、iPhoneが世界を変えた一方で、人々がデバイスに釘付けになり「目の前の出来事を見ていない」状態を生んだ、と問題提起しました。

    その上で、これからのスマートグラスに必要なのは「メニューやアイコンを大量に並べないこと」「AIが必要な情報を、必要なときにだけ差し出すこと」だと述べています。技術はガラスの中に隠れ、95%の時間は普通のメガネと見分けがつかない——その状態を量産で実現することが、同社のゴールでした。
    これは、弊社が2025年度のAWE総括で書いた 「ハードウェアの進化は、体験を派手にする主役ではなく、設計側が守るべき制約条件の集合になった」「視界を占有しない、常時表示しない、ことが好みではなく設計要件として語られている」 という観察と、見事に裏側から一致します。あちら(製造側)が「見えないこと」をコストと歩留まりの問題として解こうとしている一方で、我々(Web・表現側)は「見せない/見せる」を情報設計の問題として解かなければならない、という訳です。同じ「invisible」という要件を、製造とコンテンツの両側から挟み込んでいる構図だと感じました。


    Web視点で重要なのは、ここで前提になっている入力像です。Godet氏の描く体験は、人がメニューを操作するのではなく、カメラとセンサーが文脈を読み、AIが先回りして情報を出す——つまり「操作されないUI」です。これは弊社が繰り返し指摘してきた「スマートグラスでは操作を前提にしない設計判断」と同じ方向を向いています。Webコンテンツがこの空間に乗るとき、リンクやボタンを並べる従来のIAは、そのまま持ち込めないことを改めて突きつけられました。

    まとめ

    総括すると、このセッションは弊社のAR×Webという主題そのものではありませんでした。しかし、その表現層が成立する前提となる「見えないハードウェア」が、いま誰の手で、どのコスト構造で量産可能になろうとしているかを一次情報として確認できた意味は大きかったと思います。表現の自由度を語る前に、その器がどんな制約の上に立っているのかを知っておく——それもWeb制作会社がXRに向き合う上で欠かせない視点だと考えています。


    Building Content for Meta AI Glasses01:00 PM - 01:25 PM 視察:藤原)

    Meta の開発者向けセッション。Ray-Ban Meta/Oakley Meta などの「display なし」モデルから、display 付きの Meta Ray-Ban Display + Meta Neural Band まで、いま開発者が何を作れるかを、SDK とライブデモで具体的に示した。

    2 系統のグラスと「開発者が鍵」という姿勢

    • これまでに Ray-Ban Meta/Oakley Meta だけで 40 種類以上を投入。最新世代は 2K 動画撮影や長いバッテリー、前面中央の POV カメラなどを備える。用途は撮影・ポッドキャスト・通話・共有・ライブ配信・ハンズフリー通話・Meta AI アシスタントなど。コンパニオンアプリは 24 か国・31 言語で提供
    • Meta の考えは「新しい AI 体験の鍵は開発者」。汎用コンピューティングのプラットフォームを、Meta と開発者コミュニティの両輪で作る、という立場

    Device Access Toolkit:既存アプリにハンズフリーを足す

    • Device Access Toolkit は iOS/Android 向けの SDK。グラスのカメラ(12MP)・スピーカー・マイクへ、既存モバイルアプリから直接アクセスできる。動画ストリーミング・録画・写真撮影が可能で、バッテリー節約のためセッションの一時停止/再開もできる
    • 例(チェス・コーチングアプリ):既存アプリに「グラスを使いませんか」と促し、盤面から次の一手を読み取って、display なしでも音声でグラスに返す
    • コミュニティ事例:ベルギーの街歩き AI ガイド(Ghent)。周囲をとらえ、事前構成した LLM がスピーカーとモバイルアプリの両方で建物などを解説。ゴルフの 18Birdies は「ピンまで何ヤード?」にリアルタイムで答える(127 ヤード → ギャップウェッジを推奨、など)

    <h3">Meta Ray-Ban Display と Neural Band

    • Meta Ray-Ban Display は、消費者向けで初の display 付き。右レンズに高解像度フルカラーの display を 1 枚だけ載せ、他人からは見えないプライベートな見え方。5MP カメラ・マイク・スピーカー・タッチパッド(右側)を備え、終日かけられる軽さ。調光(transition)レンズで屋外ではサングラスになり、スキーのような明るい環境でも使えたという声も
    • 操作は Meta Neural Band。ハプティクス付きの軽量 EMG リストバンドで、タップやスワイプなどの自然なジェスチャを、カメラの画像認識を使わずセンサーだけで省電力に拾う。黒と砂色(tan)の 2 色
    • ユーザーができること:ナビ、マルチモーダル AI の視覚フィードバック、ライブ字幕翻訳、画像検索、ビデオ通話など

    Web アプリという新しい道と、AI で 4 分実演

    • display 向けには、Device Access Toolkit(iOS/Android)に加えて「Web アプリ」という新しい道が用意された。iOS/Android アプリに依存しない単体アプリで、HTML/CSS/JavaScript で作れる。IMU センサー、(スマホ側から送られる)GPS、マイク、カメラにアクセスでき、現在はプレビュー
    • ライブデモ(Abhijit)では、Web アプリを 4 分弱で構築。やり方は AI ファーストで、アプリの構想を AI コーディングエージェント(Codex/Cursor/Claude Code など)に貼って作らせる。Meta は各エージェント向けのプラグインと、スキルを入れる CLI ツール ai をオープンソース化し、ドキュメントへ誘導する「Labs MCP」も用意。題材は歩数計アプリで、加速度・ジャイロ・地磁気(方位)+ GPS(距離・速度)を使う。display の見え方は Chrome 拡張で擬似再生(いまはグラスの視界を PC へそのまま映せないのが制約)。スペインでバズったランニングアプリ(過去の自分の走りを追う)も紹介された

    <h3">「Building Content for Meta AI Glasses」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    Meta のグラスに対して、いま現実に何が作れるのかが具体的に分かる、開発者には実利の大きいセッションでした。とくに二点が印象的です。一つは Device Access Toolkit で、「新しいアプリを作る」のではなく、既存のモバイルアプリにハンズフリーの層を足して、手持ちのユーザーにそのまま届けられる、という設計です。もう一つは、Meta Ray-Ban Display 向けに HTML/CSS/JavaScript の Web アプリという道が開いたこと。グラスという新しい場所でも結局 Web が共通言語になりつつある、というのは、Web をやってきた立場として見逃せません。ライブデモで、構想を AI コーディングエージェントに渡して 4 分弱でアプリが立ち上がる様子も、作り方そのものが変わってきていることを実感させました。なお、display なしと display 付きの 2 系統はそれぞれ作り方も得手も違うので、ここは別途あらためて整理したいところです。


    SPECS: The Power of a Fully-Integrated AR Stack(01:40 PM - 02:05 PM 視察:藤原)

    前日の基調で披露された Snap の新型 AR グラス「Specs」について、製品に近い 3 人が一段深く掘り下げたパネル。

    なぜ「フル AR」を選んだか

    • Snap は、シーン理解・空間との立体的インタラクション・SLAM ベースの処理とレンダリングを伴うフル AR(full AR)をあえて選んだ。業界の多くは、より大きな市場・高い利益率・低コストを狙って、単眼・平面表示、あるいは display なしといった機能を絞った方向へ寄っている。皆が一方向へ「ジグ」する中で、Snap は逆へ「ザグ」した
    • 背景にあるのは「コンピューティングを世界の中へ持ち込み、人間的で、空間的で、社会的で、外でも使えるものにする」というビジョン。この判断は数年前から。2 年前に出した開発者向け Spectacles は、いまの新型と同等の能力を数年前倒しの形で開発者に届け、作られた体験が新型へそのまま移れるようにする狙いだった

    他にない「4 つの組み合わせ」

    • Specs を特徴づけるのは、(1) スタンドアロン、(2) ビデオ・パススルーではなく光学シースルー、(3) フル AR、(4) コンシューマー向け、の 4 点。この 4 つを同時に満たす機種は他にない
    • 比較:Magic Leap 2 は多くを満たすがテザー+エンタープライズ、Vision Pro はビデオ・パススルーでヘルメット型、Meta Ray-Ban Display は単眼で平面表示、XREAL Aura は近いが立体体験にはテザーが要る。さらに Snap は屋内・屋外の両用も加え、「新しい種類の空間コンピュータ」だとする

    垂直統合とトレードオフ

    • 強みは垂直統合。ハードウェア・OS・コンピュータビジョン・ツールまで全層を自社で持つ。容易ではないが、競合より速く動け、独自のことができる
    • シースルーを選ぶと、輝度・視野角・放熱・バッテリー・コスト・サイズ・重量と、下流のトレードオフが連鎖する。譲れないのは「完全な空間コンピュータであること」と「シースルー」。高精細で十分な視野角の display と視覚トラッキングを優先しつつ、2024 年の開発者向けより視野角を広げながら重量を減らした(社会的・屋外利用では軽さが鍵)
    • 光学シースルーは最も難しい AR でもある。現実の光がそのまま目に届く一方、重畳する映像はレンダリングと CV の処理を経る。全層を握るからこそ遅延を完全に制御でき、頭を動かしてから映像が追従するまでの motion-to-photon 遅延は 7 ミリ秒(前世代の約半分)で、人にはほぼ知覚できない水準。だから AR が世界に貼り付いて見える。輝度は nits 非開示だが、屋内と日光下の両方を想定し、電気的に色を変える(electrochromic)調光が視認性を助ける

    ユースケースと「空間 AI」

    • 用途は、楽器の習得・世界への注釈・状況認識・ゴルフのパット・ソーシャルレンズなど。新世代ではエンタメ(画面ミラーリング)も復活(XREAL や Viture が市場を実証済み)
    • Qi Pan は 3 本柱で整理:① 現実世界の実用(必要な場所に情報を置く)、② 仕事や画面用のプライベートな第 2 画面、③ 他者と関わる共有体験。最も熱を込めたのは「空間 AI」。AI がチャットボックスの中を飛び出し、周囲をセンスして「いま何をしようとしているか」を理解し、世界の中に情報を直接置ける。たとえばクルマの説明書を読む代わりに、ヘッドライトを点けたいならそのボタンが光る。家を出たら、何も操作せずに「今日いちばん速い通勤経路」や運行情報が出る、といった文脈駆動の使い方
    • Kenny Kubala(教師の息子)は教育に期待。図書館でコピー → ネット → チャットと進んできた学びが、その場・その世界で・その瞬間に答えてくれる段階へ。2 人の息子が廊下で一緒に遊ぶ共有体験も楽しい、と

    次の一手

    • 次は開発者・クリエイター(Lens Studio)側の強化、市場浸透、マーケティング。エコシステムが鍵で、開発者が既存体験を移植し始めるのが楽しみだという。レンズ制作を助ける閉ループのエージェント的な開発ツールや、旧体験を新ツールへ移す移行アシスタントも用意。ハード側にとって、利用者の「こうだったらいいのに」というフィードバックは金(gold)だと締めた

    「SPECS: The Power of a Fully-Integrated AR Stack」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    各社が単眼・display なしと機能を絞る方向に寄るなか、Snap が逆張りでフル AR・光学シースルー・スタンドアロン・コンシューマーというところをすべて取りにいった、という設計思想がはっきり伝わるパネルでした。とくに、ハード・OS・コンピュータビジョン・ツールまで全層を自社で持つ「垂直統合」だからこそ遅延を握れて、motion-to-photon を 7 ミリ秒まで詰められた、という話が印象的です。同じ日の朝にあった Applied Materials の「統合こそ土台」という主張とも響き合います。そして「AI がチャットボックスを飛び出し、必要な情報を必要な場所・タイミングで世界の中に置く(ヘッドライトのボタンが光る)」という空間 AI の語りは、Web をやってきた立場でも、情報の出し方そのものが変わっていく予感をはっきり持たせてくれるものでした。


    PANEL: glTF / USD Interoperability Workflows(03:45 PM - 04:45 PM 視察:藤原)

    3D アセットの 2 大フォーマット、glTF(Khronos)と USD/OpenUSD(Pixar 発)の相互運用を、各陣営の中心人物が掘り下げた濃いパネル。モデレーターは「3D をどこへでも publish しやすく」を掲げる VNTANA の Ashley Crowder。

    glTF と USD は「競合ではなく補完」

    • Alexey Medvedev(Meta)いわく、glTF は高度に最適化された配信・伝送フォーマットで、その役割に徹するべき。市場の需要も大きい。一方 USD は、大人数が同じアセットに同時に手を入れる制作・交換に向く
    • Meta のアバター制作がよい例。Maya で作り、特徴量を USD で保存して柔軟に制御し、最終的にユーザーへ届ける段で glTF へ変換(最も小さく効率的に端末で描画できる形)。両者は踏み合わずに共存する
    • 映画のような制作物の保存は USD、スマホ画面に出すなら glTF。それぞれ目的が違う

    変換はロスを伴う、だから検証ツールが要る

    • USD と glTF の往復は本質的にロスを伴う。USD は「同じ帽子を 12 通り作っても、最後に皆が合意した 1 つだけを送る」ような、合意形成と最終化のための器
    • Metaverse Standards Forum のプロジェクトが、FBX から共通フォーマットへ移る際の痛点を洗い出した。分類してみると「純粋なロスレス形式は 20 ほどあるが、純粋な交換形式は一つも無い。USD ですら、ある時点で芸術的判断を確定させ、何かを失っている」
    • Khronos は強力な glTF バリデータ(JSON +スキーマの機械チェック)に加え、企業独自の品質チェック(ノード数・頂点数の上限など)も作れる仕組みを用意し、すべて GitHub でオープンソース。頂点属性(テクスチャ座標の命名・解釈の落とし穴など)を網羅した文書も整備中
    • マテリアルは USD が何でも持てるぶん乱立してきたが、いまは MaterialX(+ OpenPBR シェーディングモデル)へ収れんしつつある。それを glTF 側へどう運ぶかが課題
    • 色再現も論点。Khronos の「PBR neutral tone mapper」は色を保つことに振った設計で EC 向き(Nike レッドがブラウザ間でずれると返品につながる)。映画・ゲーム用の filmic トーンマッパーは色保持に向かない。美術館の事例では、Van Gogh のひまわりを正しく再現するには、現地の照明条件(物理単位)や露出まで一緒に送らないと同じ色に見えない。実寸(cm か m か)のメタデータも失われがちで、USD は空間スキーマ(地理空間や物理シミュレーションの要請)を導入中

    Gaussian Splatting の標準化

    • 新しい KHR Gaussian Splatting 拡張は、スプラットを glTF のメッシュ・プリミティブとして扱う。USD 側も並行して進む。設計は層状で、基本拡張+圧縮拡張(SPZ は PLY 比で最大 90% 削減)や埋め込み表現を重ねられる
    • 特筆すべきは Khronos と USD が一緒に拡張とスキーマを作り、非互換な解が生まれないようにしたこと。Adobe もプラグインを素早く出し、glTF を USD に重ねてスプラットを扱い、glTF へ書き戻せるようにした
    • glTF はストリーミングと相性がよく(buffer view やオフセットで必要分だけ読む)、さらにボリュメトリック・テクスチャとして、時間方向に進むスプラット(例:試合のボリュメトリック記録)を配信する取り組みも。なお、スプラットと PBR メッシュの混在描画(再ライティング、奥行きのソート、面としての整合)はまだ研究段階

    AI 時代に「ファイル形式」は要るのか(質疑の白眉)

    • 会場から「React Native のような、人の手間を減らすものは AI が不要にする。ファイル形式も、AI が相互翻訳するなら要らなくなるのでは?」という問い
    • Nick Porcino(Pixar):相互運用は無数の落とし穴があり、誤りだらけの蓄積で学習した LLM は「ちゃんと往復できた」と自信満々に誤る。標準の価値は、言語と、適合性の物差し(テスト可能な正しさの定義)を与えること。むしろ AI 時代にこそ重要。各自が我流で USD をバイブコーディングすれば、群盲象を評す状態になり、見かけ上は通じて実際は何も通じない「バベルの塔」になる
    • Alexey(Meta):ファイル形式の標準こそ AI 世界の最高の味方。共通の土台があるから対話でき、ツールが妥当性を保証し、同じ仕様言語がどの LLM にも同じ入力を与える(明日どのモデルを使うかに依らない)
    • Henrik Edström(Cesium):「LLM は翻訳が得意だから各自バラバラの形式でいい」という主張もあるが、エージェントがその場でデータを生成し高速に反復する時代に、形式間の翻訳に割く時間も計算資源も無い。共有された表現の重要性はかつてなく増している、と締めた

    「PANEL: glTF / USD Interoperability Workflows」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    3D の標準まわりの濃い技術討論でしたが、Web をやってきた身にも刺さる論点の多いセッションでした。とくに「制作は USD(豊かに保つ)、配信は glTF(軽く最適化)」という役割分担は、一度きちんと作って各出力先へ最適化して届ける、という考え方そのもので、腑に落ちました。往復変換には必ずロスが出る、純粋な交換形式は存在しない、という冷静な指摘も実務的です。そして圧巻は最後の質疑で、「AI が翻訳するなら共通形式は要らないのでは」という問いに、登壇者全員が「むしろ AI 時代にこそ、テストで正しさを確かめられる共通の標準が要る」と答えたところ。LLM はもっともらしく誤るし、各自我流の形式は「バベルの塔」になる。この指摘は、AI を使ってコンテンツを扱っていくうえで、心に留めておきたいと感じました。


    Creating a Website Environment for Apple Vision Pro(03:45 PM - 04:10 PM 視察:名村)

    セッション「Creating a Website Environment for Apple Vision Pro」(登壇:Steve Talkowski氏/Sketchbot Studios、6月17日 Room 101A、Developerトラック)の視聴レポート。

    このセッションは、私がこれまで一貫して述べてきた「今後のWebコンテンツの表示場所はAR/MR空間に移行していく」という仮説に対して、極めて具体的な実装事例を提示してくれるものでした。なぜなら、本セッションのテーマはまさに「Apple Vision ProのSafari(=Webブラウザ)上で、3DのWeb空間を表示する」ことそのものだったからです。

    一点、先に明確にしておきます。登壇者のSteve Talkowski氏は、ご本人が「自分はノンコーダーだ」と公言するアニメーター/3Dアーティストです。そのため、セッションの中心は情報設計や運用設計の話ではなく「3D制作パイプライン」の話に大きく寄っていました。私たちWeb制作会社が普段向き合う「情報をどう構造化し、どう更新し続けるか」という論点とは、軸がややズレています。とはいえ、Webブラウザを入口にしてAR/MR空間にコンテンツを出すという構造そのものは、当社の関心領域のど真ん中です。その観点でレポートします。

    <h3">セッションの概要

    Talkowski氏は映画『トロン』へのオマージュとして「Troniverse」と名付けた没入環境を制作し、それをApple Vision ProのSafariから「Website Environment」として体験できる形で公開しました。

    ポイントは、コードをほとんど書かずに作っているという点です。氏の制作フローは概ね次の通りでした。

    • Maya/Blenderでモデリングとアニメーション制作
    • Substance Painterでテクスチャ(マテリアル)を作成
    • USD形式(USDC/USDZ)で書き出し、Reality Composer Proで組み立て
    • 完成したUSDZファイル(音声込みで約5.6MB)を自身のGitでホスティング
    • HTMLに数行のコードを追加するだけで、Safariから「Website Environment」として起動

    ここで私が注目したのは、配信の仕組みが完全に「Webそのもの」だったという事実です。3DアセットはUSDZというファイルになり、それをGit上に置き、HTMLから参照する。利用者はSafariでそのページを開き、ボタンを押すと没入環境に入る。これは新しい独自プラットフォームの話ではなく、既存のWeb(HTML+ホスティング+ブラウザ)の延長線上でAR/MR体験が成立しているということです。

    さらに、VisionOS 26では機能フラグを有効化すると表示される起動ボタンが、先週リリースされたVisionOS 27では仕様変更され、「入口・出口のUIを開発者側が自前で用意する必要が出てきた」とのことでした。氏は、この出入りの制御を任意のWebページに対して適用できる点を強調していました。つまり、特定の専用ページに限らず、どんなWebページからでも没入環境への入口を作れる、ということです。

    サービシンクの関心領域から読み解く

    ここからは、当社がこれまで論じてきた内容に引き付けて整理します。

    第一に、「Webの表示場所が空間に移る」という仮説の、最も素直な実装形がここにあります。 私は2018年の「スマートフォンの終焉」、2023年の修士論文抜粋記事を通じて、情報の表示領域は最終的に「空間」に向かうと述べてきました。その時の媒体として有力なのは、新しい専用アプリ群ではなく、更新性と汎用性を備えたWebだろう、とも考えてきました。今回のセッションは、Appleの実装(厳密には「真のWebXRではなくApple独自実装」だと氏自身も注釈していました)という限定付きながら、Safari=Webブラウザが空間表示の入口になっているという、その仮説に沿った一次事例だったと言えます。

    第二に、「ハードウェア依存ではスケールしない」という当社の論点が、ここでも裏付けられました。 AWE 2025の総括で、私は「ハードウェアに最適化された一発の成功体験は、再現性・拡張性を欠く」と述べました。今回のセッションでも、氏は配信のためにアセットを軽量化せざるを得ず、テクスチャが180MB超になると読み込みが破綻し、画質を犠牲にする調整を強いられていました。これは空間側(デバイス・ランタイム)の制約が、コンテンツ設計の前提条件になっているという、昨年来の私の主張とまさに同じ構造です。ハードウェアは体験を派手にする主役ではなく、設計者が守るべき制約条件の集合になっている、という訳です。

    第三に、見逃せないメタ要素として「AI支援によるWeb実装の民主化」がありました。 氏はコードが書けないにもかかわらず、Claude(Claude Code)にHTMLやコントローラーのコードを書かせることで、VisionOS 27対応のコードや没入環境の実装を実現していました。ここで重要なのは、「Webに出す」という最後の一手が、AIによってノンエンジニアにも開かれつつあるという点です。これは当社が以前から述べてきた「生成AIによって作り直し・差し替えが前提になる」という運用構造の話と地続きです。一方で、だからこそ私は逆の確信も強めました。誰でも空間にアセットを出せる時代になればなるほど、「何を、どの粒度で、どう更新し続けるか」という上流の情報設計・体験設計の価値はむしろ上がる、という事です。アセットを出すこと自体はAIが肩代わりしても、「出す前の設計」は肩代わりできないからです。

    まとめ

    このセッションは、登壇者がアーティストであったため、論点の中心は3D制作パイプラインにありました。その意味で、当社が主軸とする「AR空間における情報設計・運用設計」の議論とは、正面から重なるものではありません。

    しかし、Webブラウザ(Safari)を入口に、HTMLとホスティングという既存のWebの仕組みでAR/MR空間にコンテンツを出すという構造は、当社が描いてきた未来像の、現時点で最も具体的な実装事例の一つでした。そしてその実装の最後の一手をAIが担い始めているという点も含め、「Web×AR」がどこへ向かうのかを考える上で示唆に富むセッションだったと思います。

    サービシンクでは今後も「Web×AR」の可能性について研究を続け、ブログでの発表を続けていきますので、ぜひウォッチいただければと思います


    Beyond XR: The Shift Toward Spatial, Immersive Digital Experiences(04:10 PM - 04:35 PM 視察:名村)

    Vizbl Inc.のAlex Otwell氏によるセッション「The Future of Ecommerce Is Spatial Commerce」(申込時タイトル:Using Augmented Reality to Bridge the E-commerce Confidence Gap and Boost Sales)を視聴してきました。
    EC・小売におけるAR活用がテーマでしたが、私が最も注目したのは、氏が繰り返し強調した一つの命題です。「ARはもはや"可視化(visualization)"ではない。ARは"インフラ(infrastructure)"になりつつある」これは弊社がこれまで書いてきた論述と、設計条件のレベルで一致していると思います。

    「確信のギャップ」をARが埋めるという主張

    Otwell氏は、ECの本質的な課題は「集客(トラフィック)」ではなく「確信(confidence)」だと整理しました。実物大・写実的な3DをAR上で体験させることで、コンバージョンが最大40%向上、返品が約30%減少、購入確信はほぼ100%に達するというデータを提示しています。「問題はARではなく、買い手が判断に確信を持てないことだった」という訳です。
    Web制作の視点で言えば、これは「ファネルの底(コンバージョン)」をWeb技術でどう設計するかという、極めて実務的な話です。

    ボトルネックは表現力ではなく「インフラ」だった

    私が重要だと感じたのは、氏がARの普及阻害要因を「3Dの見栄え」ではなく「インフラの不在」に置いた点です。アセット制作 → AR最適化 → クラウドホスティング → 販売スタック全体への配信 → バックエンド統合、という一連の運用基盤が分断されていたことこそが、ARが「孤立したデモ」に留まってきた理由だと述べていました。
    これは弊社が「2025年度のAWE総括」で書いた「ハードウェア依存のAR体験はスケールしない」という指摘と、裏表の関係にあります。成功事例ほど場所が固定され、目的が単純で、再訪を前提としていない——その構造的限界を超える鍵が、表現の進化ではなく運用基盤の整備にある、という認識です。

    Webの設計思想がそのまま要件になっている

    さらに注目すべきは、氏が理想の体験条件として挙げた点です。「ダウンロード不要」「別サイトへの遷移不要」「デスクトップ・スマホ・タブレットに埋め込み済み」——ボタン一つで完結すること。
    これはほぼWebそのものの要件定義です。質疑では、LiDAR非搭載端末や旧機種で体験が劣化する課題も率直に語られましたが、「新しい端末が普及すれば問題は縮小する」という回答は、裏を返せばデバイス差を吸収する配信レイヤー=Web的な抽象化が必要になることを示唆しています。

    サービシンクのR&Dにとっての意味

    弊社は一貫して「Webコンテンツの表示場所はAR空間へ移行する」という仮説でR&Dを続けてきました。今回のセッションは、その移行が「表現」ではなく「インフラ」を軸に進むことを、EC・コマースという最も収益に直結する文脈から裏付けたものだと思います。
    ARがインフラ化するということは、そのインフラ上に「何を、どの構造で公開するか」という情報設計(IA)の問題が必ず立ち上がるということです。Webが30年向き合ってきた情報設計とUX設計の知見が、AR時代の競争優位になる——その確信を、また一つ強くしたセッションでした。。


    PANEL: Beyond Impressions: Measuring Phygital Fashion and XR Brand Play(04:45 PM - 05:40 PM 視察:名村)

    「Beyond Impressions: Measuring Phygital Fashion and XR Brand Play」についてのレポートです。
    登壇はSNEAKAR.IO、DrekAI、FR8QU8NCY、The Omniverse Cityの4社。スニーカーやアバタースキンといったファッション領域を起点に、ゲーム内(主にFortnite上)とリアル店舗をつなぎ、ブランド体験を「計測可能なメディア」として成立させる、というマーケティング寄りのパネルでした。
    なおこのセッションは当社が主軸に置く「AR空間へのWebコンテンツ表示」「Web技術との融合」というテーマと正面から噛み合う内容ではありませんでした。

    議論の中心は技術設計ではなく、ファンダム・オーセンティシティ(真正性)・エンゲージメント収益化といった、ブランドマーケティングの文脈にあったからです。

    ただ、それでもWeb制作の視点から見逃せない発言がいくつかありました。

    一つは、SNEAKARのIan Harrison氏が自社の技術を「マーカーベースのシステム」と明言し、「どんなブランドでも没入体験に持ち込める」と語った点です。これは我々が2023年の論述以来繰り返してきた、ARの成立条件が依然として「特定の場所・特定のトリガー」に縛られているという見立てと一致します。マーカー型は確かに導入が容易ですが、裏を返せば「マーカーがある場所でしか起動しない」固定的な体験です。昨年のAWEレポートで述べた「成功事例ほど利用場所が固定され、再訪を前提としていない」という構造的限界が、ここでもそのまま現れていたという訳です。

    もう一つ、より重要だったのがFR8QU8NCYのEmery Morrison氏の発言です。
    「アプリを作っても誰もダウンロードしない」「だから我々はフロントとなるランディングページを起点にする」「ユーザーが使うのも、支払うのも、簡単でなければ採用されない」——この一連の指摘は、結局のところブランド体験のオンランプ(入口)はWebに回帰することを示しています。実際、公式セッション概要でも「WebXRとIRLアクティベーションをオンランプとする」と明記されていました。

    ここは当社の趣旨と強く合致します。アプリという閉じた配布形態ではなく、URL一つで開けるWebこそが、ブランドとユーザーをつなぐ最も摩擦の低い接点である。XR体験が本気で「日常利用」を目指した瞬間、その入口は再びWebにならざるを得ない、という訳です。Morrison氏がコロナ禍前後のQRコード普及を「習慣化したから定着した」と説明していたのも示唆的でした。技術の優劣ではなく、いかに既存の習慣・低い学習コストに乗せるかが採用を決める、という点は、我々がWebアクセシビリティの議論を通じて長年向き合ってきた「認知負荷を下げる」という設計原則とも構造的に一致します。

    総じて、このセッションは技術セッションというより「XRをメディアバイの対象として、いかに計測・収益化するか」というビジネスサイドの議論でした。我々の主戦場であるWeb×ARの技術融合とは距離があります。

    しかし、彼らが体験の入口として無自覚にWebを選び直していたこと、そして没入体験の成否が結局「いかに摩擦なく、習慣に乗せられるか」に収束していたことは、AR空間がWebコンテンツの次の表示先になっていくという我々の仮説を、マーケティング側から裏付ける一次情報だったと考えています。


    Unlocking Presence: How AI Glasses are Changing the Way We Live04:45 PM - 05:10 PM 視察:藤原)

    Meta の Anna Gordon が、AI グラスが暮らしを変える姿を示し、語学・農業・建設の現場で実装する 3 社を招いたパネル。Day2 Main Stage の締め。

    Meta が描く「先回りして文脈を解する」グラス

    • Zuckerberg のいう「パーソナル・スーパーインテリジェンス」。これからの AI グラスは先回りし、あなた固有の文脈を理解する。会議に入る前に、グラスはすでに資料と議題に目を通し、押さえるべき 3 点を視界の隅にそっと出す。尋ねる必要すらない
    • フライトが欠航すれば、AI が予約を取り直し、家族に連絡し、アラームを直す。確認は Meta Neural Band のジェスチャーで。火曜の夜は家族の時間だと学習すれば、朝まで通知を抑える。アプリでもチャットボットでもなく、「あなたと共にあり、見ているものを見て、代わりに動く知性」。スマホは「ポケットから取り出す AI」、グラスは「もう既にそこにある AI」だとした
    • 実例も提示:農業(5 万ドルの LiDAR 一式が一言で置き換わる)、教育(後述)、ストーリーテリング(ある航空会社が Meta グラスで 20 か国の一人称 POV 映像によるグローバル広告を制作)、建設(後述)、アクセシビリティ(10 歳で視力の大半を失った Claire が、AI で「電車がいつ来るか」を知り DC の地下鉄で通勤)。「端(edge)のために設計すると、全員の体験が良くなる」。Meta AI は 6 か月で月間 10 億ユーザーに到達。ロードマップはカメラグラス → display グラス → やがて AR グラスへ、あらゆる価格帯で

    語学学習:Immerse

    • Quinn Taber は 2017 年、中東で難民支援に従事しシリア難民と暮らす中で「VR で語学学習はどう変わるか」に着目。これまでに 2,500 万ドルを調達、チーム 75 人。長年の問題は「どの語学アプリも、実生活の外へ連れ出してしまう」こと
    • この 1 年、Meta と組んでライブ体験を構築し、大手 6 社や ASU で試用中。デモでは Carnegie Mellon の 6 人がパリで実地のフランス語を練習。AI チューター(「Amherst」と呼びかける)と「中央広場への道の尋ね方」を練習してから、実際に現地の人と会話。対話が文字起こしされ「今のどうだった?」と尋ねると文法の指摘が返る。メニューを一緒に見て「グルテンフリーは?」を練習し、いざ詰まったら display に次の一言を出す
    • 翻訳は学習者の段階で出し分け:初級は仏英を両方、上級は要点のキーワードだけを強調(AI が「習得済み」と「いま伸ばすべき語」を把握)。一日の終わりに、その日の実体験の語彙・フレーズを transcript からまとめ、帰宅後に AI チューターと復習できる、つまり学びのループを閉じる。第 2 四半期だけで主要顧客から計 8,000 台のスマートグラスの発注が決まり、過去 9 年の合計を上回ったという
    <h3">農業:Agerpoint
    • Kevin Lang は「農家や農学者を置き換えるのではなく、その場での能力を高める」と強調。農業は視覚的・文脈的で、畑を歩きながら「これは正常か/病気か/灌漑のストレスか/果実の品質は/人員配置は」を絶えず判断している
    • グラスは、既存の作業の上からハンズフリーで文脈を補う。作業者は写真・音声・メモを取るだけ。3D と Gaussian Splatting でエリアのデジタルツインを作り、同じ畑・木・株(時に株より細かい単位)の過去の農学データと突き合わせる。木や株に歩み寄って質問し、指示に従う。点のサンプルを衛星・地域データと組み合わせれば、翌シーズンの意思決定にも効く
    • 安全面も初期ユースケース。1,500 エーカーを 10〜15 人で回し、160 エーカーに散布したら、他の作業者が立ち入らないよう知らせてコンプライアンスを保つ。収穫前からパック、小売までの食品安全にも

    建設:Diverge

    • Thai Nguyen は、建設はデジタル化が遅れた産業だという。2D 図面からデジタル(タブレット)への移行が転機だったが、ロボット犬や 360 度カメラで日々テラバイト級のデータを撮っても、actionable な洞察に落とすのが難しかった
    • グラスなら、撮影しつつ現場でメモを取り図面に反映でき、オフィスも同じ情報を共有できる。反応的になりがちな業界を先回り型にし、優先順位を示す。たとえばクルー(作業班)を縮小して土曜出勤を避ける、設置の遅れに合わせて月曜の搬入を火曜へずらす、など。プロジェクトは複雑化・加速し、人手不足の今、建設は変革の機が熟している
    • 安全も鍵。現場はヘルメット・バイザー・手袋が必須で、手袋でタブレットを操作するのは難しい。ウェアラブルなら視線を上げて周囲に注意を払いつつ、必要なデータを呼び出せる

    ライトニングラウンド:次に賭けるもの

    • Thai(建設):いちばん欲しいのは洞察。部屋に入った瞬間に、直前の設置の進捗、保留中の変更指示や設計変更、この壁を閉じてよいか、が分かること。トレード(職種)の輻輳も避けられ安全にもなる
    • Quinn(教育):長らくホログラフィックなレンズ(3〜4 年前にデモされた Orion)を長期ビジョンに置いてきたが、音声のみの体験に強い手応え、つまりプロダクトマーケットフィットを感じている。当面は音声中心に注力し、認知負荷を増やさず必要な瞬間に display で学びを足す。第 2 世代の安価なグラス(10 ドル級)なら数を売れ、数千ドルの機種を待つ必要もない
    • Kevin(農業):写真・動画解析 → 音声とフィードバックの往復+多言語(スペイン語の作業者と英語、さらにアジアの多言語)→ display で作業指示を視界に置き、一定の手順で行わせる、と進化させたい。計測した状況に応じた動的なフィードバックも

    「Unlocking Presence: How AI Glasses are Changing the Way We Live」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    Meta の語る「先回りして、あなたの文脈を理解し、必要な 3 点を視界の隅にそっと出す。尋ねる必要すらない」というグラス像が、いちばん印象的でした。情報を増やすのではなく、必要なものを必要な瞬間に静かに出すという考え方は、私たちが大事にしている発想とまっすぐ重なります。語学学習サービスの Immerse が、初級には仏英の両方を、上級にはキーワードだけを、と相手の習得度に応じて出す情報の粒度を変える話も示唆的でした。農業・建設の現場では、結局のところ「撮りためたデータをどう、その場で使える洞察にするか」が共通の課題で、AI グラスはそこに効く、という点も腑に落ちます。情報の量で勝負するのではなく、文脈に応じて静かに必要なものを出すことこそが本命だと、あらためて感じたセッションでした


    Where XR Meets Real Science: Unlocking Insights in Disaster, Space Weather & Earth Observation04:45 PM - 05:10 PM 視察:藤原)

    NASA の Disha Sardana が、災害・宇宙天気・地球観測という 3 つの巨大データを、没入環境(MR)と音で扱う研究を、3 つのケーススタディとして紹介。視覚に頼りきらず聴覚を「もう 1 本の分析チャンネル」として使うと、人は見落としがちな構造や変化を速く・正確に捉えられる、という実証ベースの内容。

    なぜ「音」なのか:視覚と聴覚は別チャンネル

    • 目と耳は冗長ではなく、別の情報を運ぶ。視覚は空間的な配置を一目で捉えるのが得意(例:散らばった点の中の対角線を瞬時に見抜く)。聴覚は時間的な構造を捉えるのが得意(例:時間軸上の 3 つの立ち上がりを聞き分ける)
    • スローガンは「音は機能ではない。チャンネルである(Sound is not a feature. It is a channel.)」

    ケース1:災害対応/地震被害をリアルタイムに読む

    • データは公開の IEEE VAST Challenge 2019。市民からのクラウドソース報告が、6 つの被害種別(上下水道/電力/道路・橋/医療/建物/揺れの強さ)で、リアルタイムに大量到着する
    • 問いは「どこの被害が最悪か、応答側はそれを動ける速さで把握できるか」。3D の都市モデルをスライス面で歩いて探索し、たとえば「ある時点で最大の被害(球の大きさで表現)はどこか」を探す
    • ここで音を並行トラッキングに使う。4 つのデータ次元を音に対応づけ:ピッチ=時間軸での被害報告の集計、振幅=最大イベントの深刻度、音色=どのインフラ系統か(水/電力/通信)、定位=モデル内の地理的な発生源。視覚情報が密な環境で、音はながら聴きとして効く
    • 検証(MR vs 従来のデスクトップ、34 名、HCII 2021/Sardana, Kahu, Gračanin & Matković):MR は多くの課題で有意に速く(とくに探索・カウント)、精度も同等以上(カウント、ある瞬間の最大イベントの特定、停電の検知が得意)。とくにトレンド判定で精度が最も伸び、音の変化と時間変動データを相関させられた。例外は「相関を読む」課題で、MR ではむしろ難しく、設計上の課題として明記されていた

    ケース2:宇宙天気/磁気嵐データを MR で探る

    • 宇宙天気とは、太陽と地球近傍の変動条件で、依存する技術を乱すもの。太陽嵐(高温・高速のガスが地球磁場に衝突)が、送電線を乱し停電を起こし、衛星を損傷する。だから予測が重要
    • 本ケースは実在する 37 件の大規模な磁気嵐データを使用。IEEE VR 2025 の研究のプロトタイプで、2 つのウォークスルーを提示:① SYM-H 指数と黒点数(各データ次元を没入シーンにどう写すか)、② Delta TEC(全電子数の差分、参加者が実施した音+視覚の本課題)。いずれも YouTube で公開
    <h3">ケース3:地球観測/NASA の地球データへ展開
    • 次の方向性として、同じ没入分析の原則を、大規模な地球観測データに適用する
    • 機会:NASA・NOAA・USGS は膨大なオープン地球物理データを公開しているが、その規模では平面のツールは力負けし、大半のデータは体験されないまま埋もれる
    • 手法:2 つのケースで効いた原則(空間音/連動する複数ビュー/身体的なインタラクション)を持ち込む。狙いは、複雑な地球データを専門家だけでなく研究者・意思決定者にも扱える・動けるものにすること。なお、これは進行中の研究方向で、まだ完了したユーザー実験ではない(と明示)

    何が効いたか:没入分析の 5 原則

    3 ケース・のべ 104 名から導いた 5 原則:

    1. 視覚と聴覚をペアに。耳を「第 2 の分析チャンネル」とし、目と耳で負荷を分担
    2. 異常には「イベント型」の手がかりを。しきい値や立ち上がりを離散音で。これがトレンド精度 +70% の最大の牽引役
    3. 空間音は「前方」に寄せる。重要なデータ源はユーザーの前方視野に。定位がいちばん鋭い場所だから
    4. 複数ビューを連動させる。壁に 2D、床に 3D、空間に時系列。リンクし、ブラッシング可能に
    5. 操作は「身体的」に。スライス面で時間を移動しデータに手を伸ばす。平面上のマウスではなく

    オープンソース

    • 2 つのリポジトリ(Unity プロジェクト一式・ソニフィケーションのモジュール・実験で使った計測ツール群)が公開:災害対応版「immersive-analytics-in-disaster-response」と宇宙天気版「immersive-analytics-in-space-weather」(いずれも GitHub の disha13sardana)

    「Where XR Meets Real Science」セッションへの R&D 担当 藤原のまとめ

    NASA と聞くと、ロケットや宇宙機の設計といった話が出てくるのかと思っていたので、実際は災害・宇宙天気・地球観測という巨大なデータを「どう読み解くか」に XR を使う、という内容で、いい意味で予想を裏切られました。最前線の開発そのものではなく、データを読むという研究の足もとの作業にこそ没入環境が効く、という着眼が面白かったです。なかでも「音は機能ではなくチャンネルだ」という一言が刺さりました。目は「空間の配置」、耳は「時間の構造」を捉えるのが得意で、両方を使えば人はより速く正確に変化に気づける。しきい値や立ち上がりを離散音で知らせる「イベント型の手がかり」がトレンド発見の精度を +70% 押し上げた、という結果も具体的で説得力があります。情報を視覚だけに詰め込まず、別の感覚へ逃がして負荷を分ける、という発想は、巨大データに限らず、情報の届け方を考えるうえで参考になりました。


    17th Annual Auggie Awards and Hall of Fame Ceremony(06:00 PM - 07:30 P 視察:藤原)

    AWE の名物、第 17 回 Auggie Awards と XR 殿堂(Hall of Fame)の表彰式。今年は記録的な数のノミネートが集まり、新たに 2 部門(Best Reality Capture:Reality Capture Network と共同/Ethical XR Product of the Year:XR Guild と共同)が加わった。受賞は全 18 部門におよぶので、ここでは主要なものだけを挙げる。

    主な受賞(全 18 部門は公式発表を参照)

    • Best Headworn Device(頭部装着デバイス):Spectacles(Snap)
    • Best Use of AI(AI 活用):XR Vibe Coding with XR Blocks and Gemini
    • Best Consumer App(コンシューマーアプリ):Google Maps XR
    • Best Enterprise Solution(エンタープライズ):FabStation
    • Best Reality Capture(新設):Cintoo VR Experience
    • Ethical XR Product of the Year(新設):SecureMR

    このほか、Startup to Watch Award は PROLO(CG Technologies)、Art Festival Winner は Reality Looks Back(Superposition XR Studio)。全 18 部門の受賞一覧は AWE 公式発表(Auggie Award Winners at AWE USA 2026)を参照。Best in Show 部門は最終日(6/18)のクロージングで発表予定。

    XR 殿堂(Hall of Fame)

    • 今年は 8 名が新たに殿堂入り。XR の土台を築いてきた先駆者・開拓者が顕彰された

    関連表彰:第 6 回 XR Women Awards

    • 同じ日、女性リーダーをたたえる XR Women Awards も開催。Innovation:Carolina Cruz-Neira、Trailblazer:Wadooah Wali、World Impact:Nonny de la Peña

    「Auggie Awards & XR Hall of Fame」表彰式への R&D 担当 藤原のまとめ

    セッションを聴くのとは違い、何が「賞」という形で評価されるのかが見えるのが、この表彰式の面白いところでした。新設の Reality Capture や Ethical XR Product of the Year という部門がわざわざ立ったことに、現実の取り込みや倫理が、いよいよ一過性の話題ではなく評価対象になってきた、という業界の本気度を感じます。殿堂入りで、いまの当たり前を支える技術を何十年も前に切り拓いた人たちに光を当てる文化も、新しさばかりが持てはやされがちなこの分野では貴重だと思いました。お祭りとして純粋に楽しい場でありつつ、どこに価値が置かれ始めているかが一望できる、良い締めくくりでした。

    以上、参加2日目のサマリーでした。
    サービシンクでは今回の「AWE USA2026」には開催期間全て滞在して視察をしてきます。明日以降も当社の担当がみてきたものについては速報をお届けいたします。

    またのR&D活動はブログで定期的に公開していますので「ブログ−AR/VR/MR」カテゴリーをぜひご覧ください。

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