公開日: Web制作・ホームページ制作

改正障害者差別解消法の施行から2年——あなたのサイト、ウェブアクセシビリティ対応できていますか?

「ウェブアクセシビリティ対応、そろそろやらなければ」と思いつつ、改正法施行2024年の法改正から2年が経過しようとしている——そんなWeb担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、改正障害者差別解消法とウェブアクセシビリティの正確な関係を整理したうえで、具体的に何から手をつければよいかをご説明します。「義務化」という言葉が一人歩きしているこのテーマについて、正しい理解と実践的なアクションをお伝えします。なお、アクセシビリティは「障がい者のための対応」というイメージを持たれがちですが、実際には高齢者、スマートフォンしか持たないユーザー、一時的な怪我で操作が制限されている人など、あらゆる人に関わるテーマです。この視点も踏まえながら読み進めていただければと思います。

改正法施行法改正から2年、対応が進んでいない現実

2024年4月1日、改正障害者差別解消法が施行されました。これをきっかけに「ウェブアクセシビリティの義務化」という言葉がWeb業界で広まり、多くの企業がその対応を迫られているという印象を持ったことでしょう。

しかし実際のところ、対応が進んでいる企業はまだ少数派です。株式会社Kivaが改正法施行から約半年後の2024年9〜10月法改正から約半年後の2024年10月に実施した「法改正後のウェブアクセシビリティ対応に関する調査」(対象649名)によると、小企業でアクセシビリティ対応済みと回答したのはわずか6%。大企業・中企業ともにでも対応済みは26%にとどまり、対応していないと答えた小企業は86%に上ります。対応できていない理由として、中企業では「どのように対応すればよいかわからない」(25%)がトップ、小企業では「担当者がいない」(23%)が最大の理由として挙げられています。(出典:株式会社Kiva「法改正後のウェブアクセシビリティ対応に関する調査」2024年10月)法改正施行直後の時点でこうした状況であったことを踏まえると、「何をすればいいかわからない」「コストがかかりそうで後回しにしている」という課題を抱えるWeb担当者は、今も少なくないのではないでしょうか。

法改正施行から2年が経過した今、あらためてこのテーマを整理し、前向きに取り組むための情報をお届けします。

「義務化」は正確ではない?法改正の正しい理解

まず重要な事実確認をしておきましょう。「ウェブアクセシビリティが義務化された」という表現は、厳密には正しくありません。

今回の法改正で義務化されたのは「合理的配慮の提供」です。これは、障がいのある方から個別に申し出があった場合に、事業者が負担の重すぎない範囲で対応することを指します。たとえば「サイトが使いにくいので電話でも対応してほしい」という申し出に応じることが、その具体例です。

一方、ウェブサイトそのものをアクセシブルな状態に整えること(JIS X 8341-3への準拠など)は「環境の整備」に分類され、民間事業者においては引き続き努力義務にとどまっています。

整理すると:

  • 【義務】合理的配慮の提供(障がいのある方からの個別申し出への対応)
  • 【努力義務】環境の整備=ウェブアクセシビリティ対応(JIS X 8341-3準拠など)

「努力義務なら対応しなくてよい」と思われるかもしれません。しかし、罰則がないからといって放置することには相応のリスクが伴います。次の章でその理由を説明します。

それでも対応すべき3つの理由

① リスク回避(行政指導・民事訴訟)

ただし、障がいのある方からサイトの利用しにくさについて申し出があったにもかかわらず何の対応もしない場合、「合理的配慮の提供」義務への違反として行政指導・勧告の対象となる可能性があります。ウェブアクセシビリティを事前に整えておくことは、こうした個別対応を求められるリスクを下げることにも直結します。また、対応の姿勢がまったく見られない企業は、民事訴訟に発展した際に不利な立場に置かれるリスクの可能性があります。

② SEO効果・ユーザビリティの向上

ウェブアクセシビリティへの対応は、Googleをはじめとする検索エンジンの評価基準とも重なる部分が多くあります。画像へのaltテキスト設定、見出し構造の整理、ページの読み込み速度改善などは、アクセシビリティ対応と同時にSEO向上にもつながります。また、アクセシビリティ対応の恩恵を受けるのは障がいのある方だけではありません。たとえば、屋外の強い日差しの下でスマートフォンを操作している人、腕を骨折してマウスが使えない人、加齢により視力や操作性が低下している高齢者、日本語を母国語としないユーザーなど、さまざまな状況・特性を持つ人々がアクセスしやすくなります。つまり、アクセシビリティを高めることは「特定の人への配慮」ではなく、「より多くの人に届くサイトを作ること」と言い換えることができます。結果として全体のユーザビリティが向上し、機会損失の削減にもつながります。

③ 企業イメージ・CSR(社会的責任)視点での評価

CSR(企業の社会的責任)への関心が高まる中、自社サイトのアクセシビリティに取り組んでいることは、社会的責任を果たしている企業としての信頼性につながります。取引先や採用候補者からの印象にも影響し、長期的なブランド価値の向上に寄与します。

具体的に何をすればいいか

ウェブアクセシビリティ対応の国際基準はWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)であり、日本国内ではJIS X 8341-3:2016がこれに対応しています。JIS X 8341-3:2016とはJIS(日本産業規格)が定めるウェブアクセシビリティの国内規格で、正式名称は「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」です。達成レベルにはA(最低限)・AA・AAAの3段階があり、一般的にはレベルAAを目標とすることが推奨されています。

とはいえ、すべての基準を一度に対応しようとすると負担が大きくなります。まずは優先度の高い項目から取り組むのが現実的です。

優先度の高い対応項目(例)

  • 画像へのaltテキスト設定:画像の内容をテキストで説明することで、スクリーンリーダーに対応できます

  • 色のコントラスト比の確保:文字と背景のコントラストが不足していると、視力の弱い方や色覚に特性のある方が読めない場合があります(WCAG基準:AA達成で4.5:1以上)

  • キーボードのみでの操作対応:マウスを使えないユーザーがTabキーなどで全機能を操作できるかの確認

  • フォームの入力支援:フォームの各項目にラベルを関連付け、エラーメッセージをわかりやすく表示する

  • 動画・音声コンテンツへの字幕・テキスト提供:聴覚障がいのある方への配慮

まず自社サイトの現状を把握する

対応を始める前に、現状のサイトがどの程度アクセシビリティに対応できているかを確認することが重要です。以下のような無料ツールを使って、手軽にチェックできます。

無料チェックツール

  • axe DevTools(Chromeの拡張機能):ページ上のアクセシビリティ問題を自動検出し、修正方法もあわせて提示してくれます

  • Google Lighthouse(Chrome DevTools内蔵):アクセシビリティスコアとともに、SEO・パフォーマンスも同時に確認できます

  • WAVE(Web Accessibility Evaluation Tool):視覚的にわかりやすく問題箇所を表示してくれる評価ツールです

  • デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」:デジタル庁が無償公開している公式ガイドです。対応の進め方や達成基準の解説が体系的にまとめられており、実務の参考として有用です

ただし、自動チェックツールで検出できるのはアクセシビリティ問題全体の一部にすぎません。実際の達成基準への準拠を確認するには、専門家によるレビューや実際のユーザーテストが必要になる場合もあります。

サービシンクでは、ウェブアクセシビリティへの対応についてのご相談・ご提案から承っています。「何をすべきかまだわからない」「自社サイトの状況を整理したい」という段階からお気軽にお声がけください。

まとめ

  • 2024年4月の法改正で義務化されたのは「合理的配慮の提供」であり、ウェブアクセシビリティそのものは民間事業者には引き続き努力義務
  • ただし対応しないまま放置することには、行政指導・訴訟リスク・企業イメージへの悪影響がある
  • アクセシビリティ対応はSEO向上・ユーザビリティ改善にもつながり、ビジネスメリットも大きい
  • まずは無料ツールで現状診断し、優先度の高い項目から段階的に取り組むことが現実的

法改正施行から2年が経過した今、「知っているがまだ動けていない」から「具体的なアクションを始める」へ。このタイミングで一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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