Web制作・システム開発の「予算オーバー」「納期遅れ」はなぜ起きる?
発注前に知っておきたいプロジェクト初期段階のポイント
はじめに
「依頼したのに、気づいたら予算が大幅にオーバーしていた」
「完成まで当初の2倍の時間がかかってしまった」
「完成したシステムが、思っていたものと全然違った」
Web制作やシステム開発を外注した経験のある方なら、こうした話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。あるいは、実際にご自身が経験されたこともあるかもしれません。
こうした失敗の原因を掘り下げると、その多くはプロジェクトの最初の段階──「何を作るか」「どう進めるか」を決めるフェーズ──に潜んでいます。開発の後半や公開後に問題が発覚したとしても、根本的な原因はほとんどの場合、この最初の段階にあります。
IT業界ではこの最初の段階を「上流工程」と呼びます。本記事では、Web制作・システム開発のフロー全体をわかりやすく解説しながら、「なぜプロジェクト初期段階でつまずくのか」「発注者として何を押さえておけばよいのか」を具体的にお伝えします。
これからWebサイトのリニューアルや業務システムの開発を検討されている不動産会社の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
Web制作・システム開発の全体フローと、発注者の役割

Web制作やシステム開発には、大きく分けて6つのフェーズがあります。それぞれのフェーズで「制作会社が何をするか」だけでなく、「発注者として自社が何をすべきか」を押さえておくことが、プロジェクト成功の第一歩です。
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フェーズ |
主な内容 |
発注者側の主な役割 |
|---|---|---|
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① 要件定義 |
目的・ゴール・機能・予算・スケジュールを決める |
社内の目的・優先順位の整理、意思決定者の確定 |
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② 設計 |
サイト構成・画面設計・システム設計を行う |
設計内容の確認・フィードバック |
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③ 制作・開発 |
デザイン、コーディング、システム実装を進める |
素材(物件写真・原稿など)の提供、中間確認 |
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④ テスト |
表示・動作・セキュリティなどを検証する |
実際の業務を想定した受入テストへの参加 |
|
⑤ 公開 |
サーバー・ドメイン設定を経てリリースする |
公開日の判断、社内周知 |
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⑥ 運用・保守 |
公開後の更新・改善・セキュリティ対応を継続する |
更新方針・改善要望の共有 |
一見すると「③ 制作・開発」がプロジェクトの中心に思えるかもしれません。しかし、プロジェクトの成否を最も大きく左右するのは、実は最初の「① 要件定義」と「② 設計」の2つです。IT業界ではこの2つをまとめて「上流工程」と呼びます。
なぜプロジェクト初期段階が「費用」と「納期」を左右するのか

Web制作・システム開発には、「後になるほど方針変更のコストが高くなる」という鉄則があります。
たとえば、要件定義の段階で「この機能は不要だった」と判断すれば、修正にかかるコストはほぼゼロです。しかし、同じ判断を開発の途中で行えば、すでに作り込んだ設計やプログラムを大きく見直す必要が生じ、追加の費用が発生したり、公開時期が後ろにずれたりすることになります。さらに公開後であれば、システムの改修・再テスト・再リリースが必要となり、費用は何倍にも膨らみます。
この考え方は、ソフトウェア工学の分野でBarry Boehm氏らが1970年代から繰り返し実証してきた経験則に基づいています(※Boehm & Basili, IEEE Computer, 2001年)。「初期段階の修正コストを1とすると、開発中は10倍、リリース後は100倍になりうる」という「1:10:100ルール」として広く知られており、あくまで目安ではありますが、「後になるほど高くつく」という構造は、多くの現場で実感されている事実です。
納期への影響も同様です。開発の終盤で「やっぱり仕様を変えたい」となれば、それまでの作業を部分的にやり直す「手戻り」が発生します。手戻りが重なれば、追加費用と納期の延長は避けられません。
だからこそ、プロジェクトの最初の段階にどれだけ丁寧に取り組むかが、最終的な費用と納期を決定づけるのです。
プロジェクト初期段階でつまずく3つの原因
では、なぜ多くのプロジェクトで初期段階がうまくいかないのでしょうか。現場でよく見られる原因は、主に3つあります。
原因① 役割分担があいまいなまま進んでしまう
「どこまでが制作会社の仕事で、どこからが自社で判断すべきことなのか」──この線引きがあいまいなまま始まるプロジェクトは、後半で問題が大きくなりがちです。
要件定義や設計のフェーズでは、制作会社だけでなく発注者側も主体的に関わる場面が多くあります。たとえば以下のような事柄は、制作会社ではなく発注者側でなければ判断できません。
- 社内のどの部署・誰が最終的な意思決定者になるか
- 既存の基幹システムや物件データベースとの連携要件はどうするか
- 物件写真・間取り図・原稿などのコンテンツは誰がいつ準備するか
こうした役割分担がプロジェクト開始時に明確になっていないと、「誰も決めていない」「誰かがやると思っていた」という空白が生まれ、後から追加費用や納期遅延の原因になります。
原因② 社内の合意形成が難しく、決定が先延ばしになる
Web制作やシステム開発のプロジェクトでは、初期段階で多くの「決断」が求められます。
- サイトの目的は何か(集客か、ブランディングか、業務効率化か)
- 優先すべき機能はどれか(物件検索、会員登録、問い合わせフォーム…)
- ターゲットとなるユーザーは誰か
- 競合サイトとどう差別化するか
これらを社内で合意形成するのは、想像以上に時間と労力がかかります。関係者が多いほど意見が分かれ、要件が固まらないまま開発がスタートしてしまうケースも少なくありません。
原因③ 自社の要望をうまく伝えられない
Web制作やシステム開発に不慣れな担当者にとって、「自社の要望を制作会社に正確に伝える」こと自体が大きなハードルです。
たとえば不動産サイトでよくある「物件検索で絞り込みができるようにしたい」という要望を制作会社に伝えるとしても、実際には以下のような詳細を決める必要があります。
- 絞り込み条件は何か(エリア、価格帯、間取り、築年数…)
- 検索結果の表示順はどうするか(新着順、価格順、おすすめ順…)
- 地図との連動は必要か
- スマートフォンでの操作性はどこまで重視するか
「こんなことができるようにしたい」というイメージはあっても、それを具体的な仕様として伝えるのは簡単ではありません。その結果、制作会社との間に認識のズレが生じ、出来上がったものが「思っていたのと違う」という事態につながります。
制作会社を選ぶときに確認したい4つのポイント
ここまで見てきたように、プロジェクトの成否は初期段階の進め方で決まります。そしてその初期段階をうまく進められるかどうかは、パートナーとなる制作会社の力量に大きく左右されます。
制作会社を選ぶとき、多くの方がデザインの実績や技術力、価格を比較軸にします。もちろんこれらも大切ですが、それに加えて以下の4つのポイントを確認することをおすすめします。
1. 自社の課題を引き出してくれるか
うまく言語化できていない課題や要望を、ヒアリングを通じて整理してくれるか。特に、自社の業界(不動産業界)の業務や商習慣を理解している制作会社であれば、「何を伝えればいいかわからない」という段階からでも的確にニーズを引き出してもらえます。
2. あいまいな要望を具体的な仕様に落とし込めるか
「こういう感じにしたい」というイメージを、画面設計やシステム仕様といった形に変換してくれるか。この力があるかどうかで、後工程での認識のズレが大きく減ります。
3. 役割分担をプロジェクト開始時に明確にしてくれるか
「誰が・何を・いつまでに決めるか」をプロジェクトの最初に整理してくれるか。ここが曖昧なまま進むプロジェクトは、高い確率でトラブルが発生します。
4. 最初から最後まで同じチームが対応してくれるか
打ち合わせで伝えた内容が、設計・開発・テスト・公開まで正しく引き継がれる体制があるか。担当者が途中で変わると、「前に説明したはずの要件が反映されていない」といった問題が起きやすくなります。
サービシンクが不動産会社に選ばれる理由

こうしたポイントを重視してパートナーを選ぶことが、プロジェクト成功の鍵です。サービシンクでは、これらの点を特に重視した体制でプロジェクトに取り組んでいます。その理由を3つご紹介します。
不動産業界への深い理解から、ニーズを引き出す
サービシンクのWeb制作・システム開発の実績は、その8〜9割が不動産関連です(※株式会社サービシンク公表情報より)。不動産業界特有の業務フロー・システム要件・商習慣を深く理解しているため、担当者が言語化できていない課題やニーズも、的確なヒアリングで引き出すことができます。
「物件情報の更新フローをどう設計すればよいかわからない」「ポータルサイトとの連携をどうすればいいか見当がつかない」といった段階からでも、一緒に整理していくことが可能です。
役割分担を明文化し、プロジェクト全体を整理する
プロジェクト開始時に「誰が・何を・いつまでに決めるか」を明確にするプロセスを設けています。発注者側とサービシンク側、それぞれの役割と責任の所在を最初に整理することで、後工程での「誰もやっていなかった」「聞いていなかった」という事態を防ぎます。
最初から最後まで同じチームが伴走する
サービシンクでは、要件定義から設計・制作・開発まで、一貫して同じメンバーが担当します。初期段階で共有された判断や背景がそのまま開発工程に引き継がれるため、「担当が変わったら、前の打ち合わせ内容が伝わっていなかった」という情報の伝達ロスが発生しません。
まず「相談」から始められます

プロジェクトを成功させるには、まず「今の状況と課題」を整理することが第一歩です。
「まだ要件が固まっていない」「そもそも何から相談すればいいかわからない」という段階でも問題ありません。サービシンクでは、そうした初期段階からのご相談を歓迎しています。
完璧な準備がなくても大丈夫です。現状の課題や「こうなったらいいな」という理想を聞かせていただければ、一緒に整理しながら進めていくことができます。
Web制作やシステム開発を検討されている方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
※ 本記事で参照したデータ・出典
修正コストの「1:10:100ルール」:Barry Boehm & Victor Basili, "Software Defect Reduction Top 10 List," IEEE Computer, Vol.34, No.1, 2001年。原型はBoehm氏が1976年〜1988年にかけて発表した一連の研究に基づく
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