6月、不動産会社のWeb・システム担当者が直面する5つの課題と対策
4月の人事異動が落ち着き、担当者が現状把握を終えて「成果を問われる」前に動きたい——そんな焦りを感じはじめる6月。「サイトに何か手を打たなければ」と思いながら、何から着手すればよいかわからない… このような状況にある不動産会社のWeb・システム担当者は少なくありません。
この記事では、不動産業界のWeb・システム担当者が直面しやすい課題を5つ取り上げ、それぞれの対策の方向性をまとめます。
とくに人事異動で新しくWeb担当者になった方へ、何を始めて何を準備したら良いかの指針になれば幸いです。
目次
課題1:担当者が変わり、サイトや社内システムの「現状把握」ができていない
4月の人事異動から約2ヶ月。新任のWeb担当者が「サイトの全体像」を把握できないまま6月を迎えているケースは、不動産会社において珍しくありません。
不動産サイトが「引き継ぎしにくい」構造になりやすい理由
不動産会社のWebサイトは、他業種のコーポレートサイトと比べて、システム構造が複雑になりやすい特徴があります。具体的には次のような要素が絡み合っています。
- コーポレートサイト・物件検索サイト・採用サイトが、それぞれ別のシステム・別の制作会社・別の保守契約で動いている
- SUUMO・at home・HOME'Sなどポータルサイトとの物件データ連携がある(CSV連携・API連携など方式もバラバラなことが多い)
- 物件情報の追加・更新・掲載終了のフローが「制作会社への依頼」「社内の基幹システム」「ポータル管理画面」にまたがっている
- 過去のリニューアル経緯や設計思想が文書化されておらず、前任者の頭の中にしかない
このような「属人化した構造」は、担当者が変わって初めて問題として表面化します。「前任者だけが知っていたパスワード」「なぜこのシステムにしたのか誰もわからない」——そうした状況が顕在化するのが、異動から約2ヶ月経つ6月頃です。
「引き継ぎ不全」が引き起こす具体的なリスク
担当者交代に伴う引き継ぎ不全は、単なる「業務の不便さ」にとどまらず、以下のようなリスクを生じさせます。
①サイトが止まるリスク
SSLサーバー証明書の更新期限・ドメインの契約更新・サーバーの保守期限などは、前任者しか把握していないことが多い。更新忘れによるサイト停止は、ユーザーからの信頼を損ない、物件情報の掲載機会も失います。
②費用の二重払い・無駄なコストが発生するリスク
複数のサービス・ツールが契約されているが、どれが実際に使われているか把握できていない状態では、不要なサブスクリプションへの支出が継続します。
③改善が止まるリスク
「現状を把握できていない担当者」は、改善施策を打てません。何が問題でどこを直せばよいのかが見えないまま6月を迎え、成果報告を求められる——というのが現実です。
対策の方向性:まず「現状の棚卸し」から始める
「サイトの棚卸し」として、少なくとも以下の項目を一枚のスプレッドシートにまとめることをお勧めします。
| 確認項目 | 把握すべき内容 |
|---|---|
| サイト構成 | URL一覧・使用CMS・ホスティング先 |
| ポータル連携 | 連携しているポータル名・連携方式(CSV/API)・更新フロー |
| 契約状況 | 制作会社・保守契約・ドメイン・SSL・各ツールの契約期限 |
| アクセス権 | CMS管理画面・GA4・Search Console・各ポータル管理画面のアカウント |
| 連絡先 | 制作会社・システム会社・保守担当者の連絡先 |
「何が動いていて、何がブラックボックスなのか」を可視化することが、すべての改善の出発点です。
課題2:「サイトの成果」を上長から問われはじめている
4月の人事異動から約2ヶ月。新任担当者が現状をひと通り把握し始めるこの時期、上長や経営層から「Webサイトにかけている費用に対して、成果は出ている?」という問いが届きはじめます。
KPIが設定されていない不動産サイトの多さ
不動産会社のWebサイトは、成果を測るKPIが設定されていないケースが多い。問い合わせ数・来店予約数・資料請求数などを月次で追っていない、あるいはGA4が導入されていても担当者が定期的に確認していない——という状況は珍しくありません。
2023年7月にGoogleがUA(ユニバーサルアナリティクス)のデータ収集を停止(閲覧も2024年7月に完全終了)し、GA4への移行が必須となりました。この切り替えのタイミングで計測設定が正しく引き継がれなかった企業では、過去データとの比較が困難になっているケースも見られます。
不動産サイトで追うべき代表的なKPI
| KPI | 説明 | 注意点 |
|---|---|---|
| 問い合わせ数(CV数) | フォーム送信・電話クリック数 | GA4でのイベント設定が必要 |
| CVR(コンバージョン率) | 訪問数に対するCV数の割合 | 業態・ページ別に分けて見る |
| セッション数 | 期間内の延べ訪問数 | 流入経路別に分解する |
| 検索流入数 | 検索経由で訪問された数 | GA4の参照元/メディアで確認 |
| エンゲージメント率 | 10秒以上滞在など、価値ある訪問の割合 | 評価の基準はサイトやサービスによって異なる |
対策の方向性:6ヶ月分のデータを「振り返り」として整理する
まずはGA4とGoogle Search Consoleの直近6ヶ月データを確認し、以下3点を把握することから始めましょう。
- 流入経路別の訪問数:検索・ポータル経由・SNS・直接流入のそれぞれの割合と推移
- 問い合わせ発生ページ:どのページを経由してCV(問い合わせ)が発生しているか
- 離脱が多いページ:ユーザーがどこで離脱しているか
この3点が把握できると、「どこを改善すれば問い合わせが増えるか」の議論が具体的にできるようになります。データを整理して提示できれば、下期の予算を動かしやすくなります。
課題3:ポータル依存の集客コストが重くなり、自社サイトの強化を求められている
ポータル掲載費はどこまで上がっているのか
不動産会社にとって、SUUMOやathome・HOME'Sなどのポータルサイトへの掲載は、集客の柱です。しかし、その掲載費は年々上昇し続けています。
具体的な数字を見ると、たとえばSUUMOの場合、基本掲載枠(ネットコマ)でも2026年4月の値上げを経て1枠あたり1.6万円以上(オプション込みでは2万円近く)となっており、上位表示される「ネットレポート」枠は1枠8万円以上になっています。物件数が多い会社では月間の掲載費だけで数十万〜数百万円規模になることも珍しくありません。
こうした状況について、ハウスコムフランチャイズのレポート(2025年9月)では「反響単価を低く抑えるための対策を講じても、コストが反響数に比例して増大してしまうと広告効果は良くないと判断せざるを得ない状況が、多くの仲介会社で常態化している」と指摘しています。
「自社サイト強化」が求められる背景
こうした背景から、多くの不動産会社で「ポータルに頼らず、自社サイトから直接問い合わせを増やす」という方針が経営課題に挙がっています。自社サイト経由の問い合わせは、ポータル経由と比べて以下の点で優位性があります。
- 問い合わせコスト(CPL)がポータル経由より低く抑えられる
- 自社のブランドを通じて来た顧客は、検討度合いが高い傾向がある
- 顧客との関係を自社で直接構築できる(ポータル会社を経由しない)
対策の方向性:業態別の「自社サイトへの流入設計」を見直す
自社サイトからの問い合わせを増やすには、まず「検索ユーザーが自社サイトに来たとき、何を見せているか」を確認することが先決です。業態によってユーザーが確認したい情報は異なります。
| 業態 | ユーザーが問い合わせ前に確認すること |
|---|---|
| 賃貸仲介 | 希望条件に合う物件がすぐに探せるか・スタッフの顔が見えるか |
| 売買仲介 | 会社の実績・担当者の専門知識・査定の根拠 |
| 不動産管理 | 管理戸数・対応エリア・緊急時の連絡体制 |
| デベロッパー | 開発実績・ブランドの信頼性・周辺環境情報 |
SEO対策(検索上位表示)とサイト内の導線設計は切り離せません。「コンテンツを増やす前に、今あるサイトで問い合わせが発生しやすい構造になっているか」を確認することが先です。
課題4:AI検索への対応を上長から求められているが、何をすればいいかわからない
AI検索の普及で何が変わっているのか
生成AIや、Google AI Overviewのように検索結果に組み込まれたAI要約など、AI検索ツールの普及は、ユーザーの情報収集行動を変えつつあります。
株式会社ヴァリューズの行動ログ調査(2025年12月時点)では、Google検索の約64.8%がゼロクリック(検索結果画面で完結し、Webサイトに訪問しない)で完結しているというデータがあります。また、AI Overviewが表示されるクエリでは検索1位のCTR(クリック率)がグローバルで約58%低下したというデータがあります。日本市場でも約37.8%の低下が確認されています。
出典:note pro「AI時代の企業発信サミット2026 調査レポート」(2026年2月) 出典:Ahrefs調査(2026年2月発表、2025年12月データ使用)
Gartnerは2024年2月の発表で「2026年までに従来型検索の利用が25%減少する」と予測していました。
出典:Gartner(2024年2月19日発表)"Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026"
不動産会社でのAI活用も急速に拡大している
不動産会社自身のAI活用も進んでいます。不動産業務支援システムを提供する株式会社いえらぶGROUPの調査(2025年5月、有効回答222件)によると、2023年調査(同社調べ)では日常的に利用している割合は約12%にとどまっていましたが、利用経験者全体では41.4%に達しており、急速な普及が進んでいます。
出典:いえらぶGROUP「生成AIを業務で利用している不動産会社は41.4%!」2025年6月
AIO対策とSEOの違い
「AIO対策(AI Overview最適化)」とは、Google AI Overview・ChatGPT・PerplexityなどのAIが回答を生成する際に、自社コンテンツを引用元として選ばせるための最適化施策です。従来のSEOが「検索結果ページでの上位表示→クリック獲得」を目的とするのに対し、AIO対策は「AIの回答文の中で自社サイトが引用される」ことを目的とします。
ただし、AIO対策はSEO対策を否定するものではありません。むしろ「良質なコンテンツを正しい構造で公開する」というSEOの基本の上に積み重ねるものです。
対策の方向性:不動産会社が今すぐできる3つのこと
① FAQ形式のコンテンツを充実させる
「○○区の賃貸相場はいくら?」「不動産会社に相談するタイミングはいつ?」「リノベーション済み物件と新築の違いは?」のような、ユーザーが実際にAIに質問する形式のコンテンツは引用されやすいことが確認されています。FAQPageスキーマ(構造化データ)を実装したページはAI引用率が向上するという報告があります。
② 構造化データ(Schema.org)をサイトに実装する
物件情報・会社情報・FAQ・口コミをSchema.orgの仕様に沿ってJSON-LD形式でマークアップすることで、AIがそれぞれの情報を機械的に理解しやすくなります。WordPressを使用している場合はプラグインで対応できるケースもあります。
③ E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を高めるコンテンツを増やす
不動産会社にとってのE-E-A-Tとは、「この会社は不動産のことを本当に知っている」とAIに判断させるための信号です。実績事例(数値付き)・専門的な解説記事・著者の経歴・外部サイトからの言及などが該当します。特に「ニッチな専門領域の一次情報を持つ企業の方が、特定テーマのAI引用を獲得しやすい傾向がある」とも指摘されており、不動産特化・地域特化の専門性は大きな武器になり得ます。
出典:株式会社renue「AIO対策完全ガイド2026年版」
課題5:下期・来期に向けた「リニューアル予算」の検討が始まる
不動産会社におけるサイトリニューアルの予算検討時期
多くの不動産会社では、3月決算・4月開始の事業年度を採用しています。そしてWebサイト・システム管理部門において、下期や来期に向けた「リニューアル予算」の検討(予算取り)を始める時期は、その企業の「決算期(年度末)」から逆算して4〜6ヶ月前からスタートするのが一般的です。
なので、予算検討のピークは「夏から秋(8〜9月)」にかけてとなりますが、早いと6月頃から来季はどうするか、といった話が出始めます。
不動産サイトのリニューアルが「難しい」理由
不動産会社のWebリニューアルは、一般的なコーポレートサイトのリニューアルとは要件が根本的に異なります。中〜大規模の不動産会社のサイトは物件数が数百〜数千件に及ぶことがあり、これを管理・検索・表示するシステムは、一般的なWordPressとは設計の前提が大きく違います。
たとえばWordPressは元々ブログ用のCMSであるため、数千件の物件情報を扱う場合には運用負荷が高くなりやすく、「物件情報のCSV一括取り込み」「業態別の検索軸の設定」「ポータルとのリアルタイム連携」などは、不動産業務に精通した設計者でなければ適切に実装できません。
リニューアル計画が「予算を確保してから制作会社を探す」という順序で進んでしまい、予算規模と要件が合わないまま発注されることで、後から仕様変更・追加費用が発生し続けるケースも少なくありません。
対策の方向性:「要件の言語化」を先に行う
① 現在のサイト・システムの課題を具体的に言語化する
「古い」「遅い」「使いにくい」ではなく、「物件情報の更新に毎回制作会社への依頼が必要で、反映まで2〜3日かかっている」「スマートフォンからの物件検索で絞り込み条件が少なく、離脱率が高い」のように具体化する。
② リニューアル後に達成したいKPIを数値で設定する
「問い合わせ数を現在の月○件から○件に増やす」「物件更新の工数を現在の○時間/週から半分に減らす」など、定量的な目標が設定できると、制作会社への要件説明もしやすくなります。
③ 業務要件(ポータル連携・物件DB・管理画面)を洗い出す
不動産サイトの要件定義で最も見落とされやすいのが「業務要件」です。どのポータルとどんな方式で連携するか、物件DBの項目設計、社内の誰が・どのタイミングで・どうやって物件情報を更新するのか——これらを整理しないまま発注すると、開発途中での仕様追加が続き、予算超過の原因になります。
まとめ:今すぐできる「現状チェック」から始める
ここまで挙げた5つの課題に共通するのは、「把握できていないことが多い」という点です。
| 課題 | まず確認すること |
|---|---|
| ①担当者交代・現状把握 | サイト・システム・保守契約の棚卸し |
| ②成果を問われている | GA4・Search Consoleの直近6ヶ月データ |
| ③ポータル依存脱却 | 自社サイトからの問い合わせ比率と流入経路 |
| ④AI検索への対応 | コンテンツ構造・FAQ有無・構造化データの実装状況 |
| ⑤リニューアル検討 | 現サイトの課題の言語化と業務要件の洗い出し |
どれも「まず現状を把握する」ところから始まります。
サービシンクでは、不動産会社のWeb・システム担当者向けに、現状のサイト・システムの課題をヒアリングしながら整理するご支援をしています。
- 現サイトの構成整理
- GA4/Search Consoleの確認
- ポータル連携の整理
- 物件DBやCMSの見直し
- リニューアル要件定義
などの他、「何から手をつければよいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
FAQ(よくある質問)
Q. 不動産会社のWeb担当者が6月に直面しやすい課題は何ですか?
A. 担当者交代による現状把握の遅れ、成果の報告、ポータル依存コストの増大、AI検索への対応、下期リニューアル予算の検討の5つが挙げられます。特に4月異動から2ヶ月経つこの時期は、前任者にしか把握されていなかった問題が一気に表面化しやすい時期です。
Q. 不動産サイトのAIO対策として今すぐできることは何ですか?
A. FAQ形式コンテンツの充実、構造化データ(Schema.org)の実装、E-E-A-Tを高める専門性の高い記事の公開が有効です。FAQPageスキーマを実装するだけでAI引用率が最大2倍になるという報告もあり、技術的なハードルも比較的低い施策です。
Q. ポータルサイト依存から脱却するにはどうすればよいですか?
A. 自社サイトへの検索流入を増やすSEO対策と、ユーザーが問い合わせしやすい導線設計を組み合わせることが基本的なアプローチです。まず自社サイト経由の問い合わせ比率を把握し、業態ごとにユーザーが求める情報を整理することから始めましょう。
Q. 不動産サイトのリニューアルを検討する際、最初にやるべきことは何ですか?
A. 制作会社を探す前に、現状の課題を具体的に言語化し、リニューアル後のKPIを数値で設定することが重要です。特に物件DB設計・ポータル連携・管理画面の業務要件を洗い出しておかないと、発注後の仕様変更・追加費用の原因になります。
Q. 不動産会社でAI(生成AI)の活用はどの程度進んでいますか?
A. いえらぶGROUPの調査(2025年5月)によると、生成AIを業務に利用している不動産会社の割合は41.4%に達しており、2023年頃の10〜12%から約2年で約4倍に増加しています。物件説明文の作成・広告文作成・問い合わせメールへの返信などが主な用途として挙げられています。
※本記事では、一部の画像にAI画像生成ツールを使用して制作したものが含まれています。
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