CES 2025に見るWebとXRの展望

はじめに

こんにちは、サービシンクR&Dの藤原です。先週、世界最大級のテクノロジーイベント「CES 2025」が開催されました。私は2025年1月7日(火)から9日(木)までの丸3日間、アメリカ・ラスベガスで会場を回ってきました。移動時間を含めると月曜から土曜まで4泊6日の旅です。まさかWebの制作会社に入って海外出張をする日が来るとは思ってもいませんでしたが、最新の技術動向や革新的なプロダクトが一堂に会する場として、WebとXRの融合に関する新たなインサイトを得る良い機会になりました。

展示されていた製品の細かいスペック紹介やレビューなどはまたの機会か他サイト様にお任せするとして、ここではWeb×XRの視点からCES 2025で感じたことや学んだことをレポートしたいと思います。

スマートグラスの多様化とその可能性

まず強く感じたのは、CES会場の至る所でスマートグラスの類が展示されていることへの驚きです。会場全体に設置されている大きな看板にもVRゴーグルのようなものを着けた人が描かれていますし、想像していたよりも多くの場所で目にすることができました。世界中の企業が、さまざまな目的でスマートグラスに注目していることがよくわかります。面白いことにスマートグラスを置いているエリアは、IoTやゲーミング、ヘルスケアなど数多くの業界にまたがっていました。

スマートグラスが翻訳やエンタメに有用だとは認識していましたが、耳の聞こえづらい方向けの集音スピーカーや視覚表示をサポートする製品、あるいは目が悪くなるのを予防するために光度センサーを搭載していて暗いところでアラートを出すような、特定の用途に特化したものもあり、現地で新たな発見がありました。このように「スマートグラス」と呼ばれる製品の中には、ディスプレイを搭載していないものも多数存在します。

私たちはもともと、スマートフォンの画面の大型化や扱う情報量の増加の行く末としてARの世界に注目し始めました。だとすれば「ARグラス」だけを見ていればいいのかというと、そうではないと思います。ARグラスやVR/MRゴーグルに限らず、スマートグラスというジャンル全体に、日常生活におけるWeb(だけに限らず、あらゆる情報)へのアクセス方法をガラッと変える重要なツールとなる可能性があると考えています。

Webの進化とXRの役割

対話型AIがWeb検索機能を有する現在、一部の人にとっては既に『Web』が単なる「AIが回答を生成するためのデータソース」になっているかもしれません。この変化に伴い、Webサイトの情報は必ずしも目で見るものではなく、音声で聴くものや、簡潔なテキスト・画像での表示だけになるケースも増えていくのではないでしょうか。そのため、Web×XRを考える身としては、「デジタル表示をするディスプレイを搭載していないスマートグラス」、つまりレンズ部分は単なるガラスやプラスティックの状態のものであっても注目する価値があると考えています。

技術が進めば、多くのスマートグラスがディスプレイを搭載するようになるでしょう。しかし現段階では、あえて「ディスプレイを持たない」ことで得られる利点が多数あるのも事実です。というのは、いくつかのディスプレイ付きスマートグラスを試用してみると、UI操作には目の焦点をディスプレイに投影されたアイコン等に合わせる必要があり、少なからず集中力が求められると感じました。もちろん室内でくつろいでいる時や立ち止まっている時は問題になりません。しかし、特に歩行中など動きの多いシチュエーションでは、(歩きスマホと比べれば格段に)周囲の状況を見渡しやすいデザインであるものの、依然として注意が散漫になりがちでした。

そのため、状況によっては音声コマンドや簡単な視覚表示での応答を組み合わせるユーザー体験がベストになることもあるのではないかと思います。今後出るXRデバイスでは、ディスプレイを備えているものであっても、状況によって視覚的な表示をするのか補助的な表示するをするのか、適切に切り替える必要があるのかもしれません。

Webコンテンツを作る側としては、生成AIの回答に負けない「サイトを訪れたからこそ得られる体験」を作らなければいけませんし、AIを通しても正しく伝わるような正しい情報設計が求められるのでしょうね。

やっぱりApple Vision Proはすごい

CESの会場でXRデバイスといえるものをいくつか使ってみましたが、初めて使った時の感動や、使っていて「良い」と感じる部分では、昨年2024年に発売されたAppleのVision Proがひときわ抜けていたと改めて感じました。パススルーで表示される現実世界の描画が綺麗なのはもちろん、ストレスなく直感的に操作できる点が素晴らしいです。アイトラッキングやハンドトラッキングのラグはほとんどなく、ジェスチャーへの反応でも困ったことがほとんどありません。

Vision Proを体験しているがゆえに、私自身のXRデバイスに対するハードルが上がっているのかもしれませんが、どうしても「どれだけ小型化され、どこまでVision Proに追いつけているのか」を基準に考えてしまいます。MetaのOrionには大きな期待を寄せていますが、市販されるまでにはまだ数年かかると聞きます。あのMetaでさえ数年を要するのであれば、他社製品で同等以上のものが出るには、さらに時間がかかるかもしれませんね。

Ray-Ban Meta

CES以外にも今回の旅で楽しみにしていたことがいくつかありました。

カジノ......ではなくRay-Ban Metaです。ディスプレイは搭載せず、スマートフォンと接続するタイプのスマートグラスで、写真・動画撮影、音楽再生、通話などの機能を持っています。また、Meta AIが搭載されており、「Hey Meta, take a photo」のように呼びかければ物理操作なしで写真を撮ったり、他の機能にアクセスすることが可能です。そして何より、WayfarerなどRay-Banの人気モデルをベースにしているので、デザインがとても良いです。前から欲しかったのですが、日本では未発売のため、今回アメリカに行ったら実物を試そうと楽しみにしていたのです。

見ているものについてMeta AIに質問できる機能は現在、米国、カナダ、オーストラリア、英国において英語で利用可能です。

Ray-Ban Metaスマートグラスで見ているものについてMeta AIに質問する

なかにはこのように日本で使えない機能もありますが、写真撮影と音楽再生だけをとっても満足度はかなり高いです。日本でも、CanonのPowershot Vシリーズのようにスマホを取り出さなくても撮影できることを売りにしている製品が出ています。ですがこのスマートグラスはそれをさらに超えていると個人的には思います。いま見ているものを、ポケットやカバンからスマホを出す手間なく、そのまま撮影できるのです。撮りたいものから目を離す必要がなく瞬時に写真が撮れるのでシャッターチャンスを逃しません。

ただし帽子を被るひとは注意してください。写真は縦長になるので気をつけていないと帽子のつばが写り込んでしまいます...... 私は何枚か撮ったあとに見返して気がつきました。

また、音楽再生機能については想像していたよりも音漏れしないことに驚きました。Ray-Ban Metaをかけて音楽を流している人に近づいても、音量を80〜90%ほどまで上げない限り大きく漏れることはありませんでした。周囲がうるさいと自動で音量を上げてくれる機能もあるので、快適に音楽を聴けそうです。見ているものについてAIに尋ねたり翻訳を依頼したりと、まだロックされていて試せない機能も多いため、早く日本でも発売してほしいですね。

まとめ

CES 2025を通じて、Web技術とXR技術の融合が今後のデジタル体験をどのように変革していくか、その可能性と課題を多くの面から観察することができました。

まず、スマートグラスの多様化は非常に興味深く、ディスプレイを搭載しないモデルも含め、さまざまな用途やニーズに応じた製品が数多く展示されていました。これにより、ARグラスやVRゴーグルに限らず、スマートグラスという分野全体に、Webと繋がる未来があることを確かめられました。

さらに、Apple Vision Proの存在感とその技術的な優位性を再認識することで、XRデバイスの進化がユーザー体験(UX)にどれほど大きな影響を与えるかを実感しました。特に、直感的な操作感や高精度なトラッキング機能は、ユーザーの満足度を大きく高める要素であり、今後のXRデバイス開発においても重要な指標となるでしょう。

総じて、CES 2025はWeb×XRの未来を見据える上で非常に有意義なイベントでした。最新技術の動向を直接体験し、今後のプロジェクトに活かすべきアイデアやインスピレーションを得ることができました。サービシンクではR&DとしてこれからもWebとXRの未来を考えていきたいと思います。

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