公開日: AR・VR・MR

CES 2026で見たスマートグラスの現在地

サービシンクR&Dの藤原です。12月にベルギーへ行ってきたばかりですが、CES 2026に参加するべく、今度はラスベガスまで行ってきました。
改めて「CES」ですが、毎年1月に開催される世界最大級のテックイベントで、スマートホームやヘルステック、モビリティなど、さまざまな分野の最新製品やプロトタイプが一堂に会します。2026年はメディアデーを除くと1月6日から9日までの開催で、私はそのうち3日間、会場を歩き回っていました。

今回は去年に続いて2回目の視察ということもあり、前回と比べてスマートグラスがどのように進化しているか、出展企業の顔ぶれや展示の傾向に変化はあるか、といった点を意識しながら見て回っていました。(昨年の視察の様子は『CES 2025に見るWebとXRの展望』をご覧ください)
ある程度勝手がわかってきた分、もう少し効率よく回れるかとも思ったのですが、CESはどこに面白いブースが紛れているかわかりません。事前に調べて回る場所を決めてしまうと、思わぬ発見を取りこぼしてしまいそうで、結局今年も会場のほとんどを歩き尽くすことになりました。

ホノルルで一度降りてラスベガスへ

ラスベガスまでは、ハワイのホノルルを経由して向かいました。選日のベルギー行きでは経由地のフランスのシャルル・ド・ゴール空港まで15時間以上、ずっと空の上にいたことを思うと、6時間ほどで一度地面に降りられるのは、体力的にも精神的にもかなり助かります。

そのままホノルルで少し観光できたら理想的だったのですが、観光するには微妙に足りない乗り継ぎ時間でした。もともとはもう少し外を見て回るつもりでいましたが、出発便が1時間ほど遅れた影響で乗り継ぎ時間が短くなってしまい、ここで遊びに出て飛行機に乗り遅れるわけにもいかないと、空港の周りを少し歩き、椰子の木を眺めた程度で戻りました。とはいえ空港はとても広くて、辺りを散歩しただけで2万歩近く歩いています。

椰子の木

今回泊まったのは、ラスベガス中心街のメインストリート沿いにある「フラミンゴ・ラスベガス」というホテルでした。去年は「ゴールデンナゲットホテル」というダウンタウンのホテルに泊まっていたため、会場まで車移動が必要だったのですが、今回はかなり立地に恵まれています。会場のひとつであるヴェネチアンホテルまでは徒歩圏内で、メイン会場のLVCC(Las Vegas Convention Center)へも、ホテル直結の駅からモノレールで移動できます。

ダウンタウンからもシャトルバスが出ているので、どちらに泊まっても、実際には移動に困ることはないと思いますが、やはり会場に近いというのは想像以上に楽でした。

フラミンゴ

最終日に気づいたのですが、ホテルの敷地内には本当にフラミンゴがいました。ピンク色でした。

CESでの2026年のスマートグラス

アワードを受賞していたスマートグラス

さて、今年のCES2026を通してスマートグラスを見て回った結論としては、「まだ主役になれるところにはないが、前進していることは間違いない」という印象でした。もともとスマートフォンにすぐ取って代わるようになるとは思っていなかったので、その意味では想定通りの進化ペースだとも言えます。

目に見えて感じられた変化のひとつは、スマートグラスを「アイウェアとして成立させよう」という意識が、さらに強まっていた点です。 普通のメガネに近づけようとするデザインの工夫は多くのブースで見られ、中にはフレームの前面を付け替えてデザインをカスタマイズできるような製品もありました。 12月に往訪したベルギーでの「UnitedXR」でも話題になっていましたが、「常に身につけるデバイス」として考えたとき、見た目や違和感のなさは依然として大きなハードルになります。

これは単に「見た目を良くしたい」という話ではなく、スマートグラスを取り巻く状況が少しずつ変わってきた結果のように思えます。 MetaがRay-Banと組んだスマートグラスで一定の売り上げを出したことで、「眼鏡として違和感なく成立するかどうか」が、プロダクトの評価を大きく左右するという認識が、メーカーの間で広まっているのでしょう。

ディスプレイの明るさやカメラ、マイク、AIといった技術はまだ発展途上ではあるものの、最低限の体験を成立させる要素は揃い始めています。その結果、「次はどこを煮詰めていくべきか」という視点が、性能だけでなく「これをどう日常に溶け込ませるか」に向き始めている。CES2026の会場では、そんな空気感をまとった展示が以前よりも増えている印象を受けました。

別の見方をすれば、重量や視野角、バッテリーといった技術的な課題をすべて同時に解決するだけのコストをかけられないメーカーにとって、ファッション性を前面に出すことが、現実的かつ戦略的な選択肢になってきている、とも言えます。性能を極限まで引き上げるのではなく、「まずは違和感なくかけてもらう」ことを優先する。その割り切りが、ここ数年よりもはっきりと表に出てきたように感じました。

ディスプレイを持たないAIグラスではこうした流れがより顕著です。見た目の完成度は確実に上がっていましたが、機能面ではAIアシスタントによる文字起こしや翻訳、撮影といった用途が中心で、全体としては昨年から大きく変わった印象はありませんでした。

ただしこれは停滞というよりも、「やることが固まってきた」状態に近いようにも見えます。カメラとマイクを前提に、現実世界の情報を拾い、それをAIで処理する。この役割に関しては、すでに一定の形が見え始めている段階なのかもしれません。

一方で、製品として展示されているディスプレイ付きのスマートグラスについては、単色表示だけでなくカラー表示が可能なものが増えてきてはいましたが、解像度や視野角といったスペック面で、劇的な変化があったわけではありませんでした。

技術的な発展が止まっているというよりも、日常使いに耐えるサイズや重量、消費電力の枠内で、どこまで体験を広げられるかという制約の中で、各社が慎重に手を進めているように見えます。

そんな中で、特に印象に残ったのが、いくつかの日本企業の展示です。

まずはCellidです。

Cellidのスマートグラスモジュール

Cellidは以前からウェイブガイドレンズを開発している企業として知られており、私自身も昨年、単色とカラーのディスプレイデモを体験していました。今年の展示では、同社のアイトラッキングモジュールを組み込んだ、Foxconnとの共同開発によるスマートグラスを見ることができました。

このプロダクトは、一般的なスマートグラスとほぼ同じサイズ感で、Meta Ray-Ban Displayと並べても違和感のない大きさです。その中にアイトラッキング機能が組み込まれているという点はかなり驚きでした。アイトラッキングというと、Apple Vision ProやMeta Questのような大型デバイスで体験するもの、という印象が強かったので、それがメガネサイズに収まっているのを見て、「ここまで来ているのか」と感じました。

もうひとつ印象的だったのがTDKの展示です。TDKはいくつかの技術展示を行っていましたが、その中でも実際に動作する網膜投影ディスプレイのデモを体験することができました。フルカラーのレーザーを眼球奥の網膜に直接投影する方式で、現実の視界にAR表示を重ねる点ではウェイブガイド型と似ていますが、決定的に違うのは視力に依存しないことです。

フルカラー網膜投影ディスプレイ

私は視力があまり良くなく、普段は眼鏡をかけていますが、この網膜投影ディスプレイでは眼鏡なしでも映像がはっきりと見えました。周囲の風景はぼやけているのに、映像だけがクリアに見えるという、不思議な体験です。さらに、このディスプレイは視野角が最大で約70度あるとのことで、一般的なウェイブガイド型のスマートグラスと比べてもかなり広い領域に映像を表示できます。この視野角で日常使いできるサイズ感に収まるのであれば、かなり可能性を感じる技術だと思いました。

最後に、個人的に今後気になっているのは、Android XRを搭載したスマートグラスが今後どのように出てくるのか、という点と、今年登場予定のSnapの「Specs」(同社のMRグラス「Spectacles」のコンシューマ向けモデル)が、XR業界全体にどのような影響を与えるのか、というところです。また、スマートグラスの入力方式として、グラスによるアイトラッキング、リストバンドやリング型コントローラによるハンドトラッキングなどの勢力図が、今後どう変わっていくのかも気になっています。

Meta Ray-Ban Displayを買った話

今回の渡米でもうひとつ楽しみにしていたのがMeta Ray-Ban Displayです。2025年の9月に発売されたものですが、アメリカ国内のRay-BanかMetaのストアで直接デモを受けてサイズを確認しないと購入できないようになっています。そのため、今回アメリカに行くタイミングで買おうと、あらかじめデモの予約を入れていました。

正直なところ、10月の時点で「これを買うためだけにアメリカへ行くのもありでは……?」と本気で考えたくらいなのですが、製品の在庫状況や予約枠の制限もあって、そもそも予約を取ること自体がかなり大変でした。毎日予約枠が開放されるのをチェックし続け、ようやく確保できたのがこの1月の予約です。

ところが予約当日、デモを受けるためにRay-Banのストアに行って驚愕しました。なんと「デモはできるけど、製品の在庫がない」とのこと。「明日には入荷する予定だから、確実とは言えないけど、また同じ時間に来てほしい」と言われ、「もしかしたら明日買えないんじゃないのか…?」という不安を胸にその日は店を後にしました。

「明日(店に)来るときはデモを受けなくても買えるよっていってたけど本当か?」
「そもそもデモ必須って話は何だったんだ?」
そんなことを考えながら、なんとも言えない気持ちで会場に戻ったのを覚えています。

翌日の昼はWynnというホテル内の会場を見て回っていたのですが、そこでちょうど「Wynnの中にMeta LabというMetaのオフィシャルストアがあって、Meta Ray-Ban Displayが予約なしで買えるらしい」という情報を耳にしました。距離的にも近かったので立ち寄ってみたところ、飛び込みでデモ予約をしていなかったのにもかかわらず、その場でデモを実施させてもらえ、驚くほどあっさり購入できました。

Meta Ray-Ban Display

実際に使って、まずは画面の綺麗さに感動しました。今回は度付きレンズを選べなかったため、私の視界ではディスプレイが少しぼやけて見えますが、それでも映像がしっかり表示されていることは確認できます。事前情報どおり、設定で明るさを上げるとかなり明るくなり、日差しの強い屋外でも画面を視認できました。

また、スマートグラスのメインメニューは縦や横一列のスクロール形式のものが多いですが、Meta Ray-Ban Displayのメニューはグリッド形式になっていて、さらに横にもページが続いていました。これは、手首に巻いたEMGバンドによってハンドジェスチャーで上下左右の操作が簡単にできるからこそ成立している、Meta Ray-Ban DisplayならではのUIだといえます。ディスプレイサイズが限られている中でも、一度に多くの要素を配置できるグリッドメニューは、一覧性が高く、とても使いやすく感じました。

ただ不運なことに、私の環境ではいくつかの機能が制限された状態になってしまいました。Metaのサポートに問い合わせたところ、日本で購入したiPhoneと接続している場合、アメリカにいても機能制限がかかっている可能性があるという説明を受けました。

というわけで、現時点では「本来の実力をフルで体験できた」とは言い切れない状態です。ちょうど6月にも再びアメリカへ行く予定があるので、そのタイミングで「アメリカ販売のiPhoneを購入する」などして、もう一度きちんとリベンジしたいと思っています。Meta Ray-Ban Displayについては、そこで改めて使い込んだうえで、もう一度感想を書きたいところです。

まとめ

CES2026を通して改めて感じたのは、いまのスマートグラスは「スマホの次」と呼べる段階にはまだ至っていないものの、カメラや時計、地図の代わりとしては、すでに十分実用的なレベルに近づいている、ということでした。これらをハンズフリーで使えるというだけでも、とても助かるシチュエーションは数多くあると思います。

最近では「スマホの次」としてペン型デバイスが登場する、という噂を耳にすることもありますが、MetaとRay-Banのグラスにディスプレイが付いたときの感動を思うと、やはり視覚的な情報を提示できるという点は大きいと感じます。加えて、スマートグラスの多くにはビームスピーカーも搭載されており、音声と映像を組み合わせてより多くの情報を扱えるという意味でも、ペン型デバイスより優位なポジションにあると考えています。

私たちはもともと、「画面サイズの拡大による次のステージ」として、AR表示を可能にするスマートグラスがスマートフォンの次になると考えてきました。そこに加えて最近は、「AIの進化によってコンピュータがより多くの現実世界の情報を理解するようになる」という流れが、よりはっきりと見えてきています。その文脈で考えると、人間の視界や音、頭の位置といった要素に深く結びつく眼鏡型デバイスは、今後ますます重要なポイントに位置づけられていくはずだと感じています。

CESは毎年歩き回るたびに体力を削られますが、その分、技術が「次にどこへ向かおうとしているのか」を肌で感じられる場所でもあります。3度目になる来年も、またくたくたになりながら会場を歩き回ってきたいと思います。

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