サービシンクが思い描くAR/MRの世界の定義(2025年)
こんにちは、サービシンクの名村です。サービシンクでは2024年から「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」の可能性を探るためにR&Dを開始しました。その皮切りとして2024年3月にはAppleが発売した「Apple Vision Pro(以後AVP)」を日本未発売の時点で購入し、いち早く実際に体験しさまざまなAVPアプリを試し、「空間に情報を配置」した時にどの様な可能性があるのかを調べてきました。
またこの全てのことの発端は私が2018年に書いた「サービシンクの考える「スマートフォンの終焉と次のデジタル体験」の未来予測」というブログが元になっております。当時より海外の「Kickstarter」や「Indiegogo」といったクラウドファンディングサイトで出資を募っていた「ARグラス」を購入し、その可能性を試していました。当時のメガネ型の製品はほぼ「パソコンやスマホなどの外部拡張ディスプレイ」という位置づけであり、ケーブルで繋いで眼の前の空間に大きな画面として表示させる、というものしかありませんでした。現在「メガネ型」としてトップシェアを誇っているXREALも、まだ日本でNTTドコモ、AUそれぞれが販売代理会社として日本への売り込み始めていた時期でした(それ以前から製品は出ていましたがそれほどメジャーになりきれていませんでした。)
私は2022年4月〜2024年3月まで「慶應義塾大学大学院経営管理研究科」に通い「MBA」を取得を目指して通っていましたが、修士論文として書いたのはこのAR/MRをテーマとした「ARデバイスの進化とデジタル情報の表現方法の進化の可能性」というものでした。修士論文のテーマにするほど私は今後のARが確実にデジタル表現のディスプレイとなっていく可能性を信じています。それを元とした当社のR&Dの活動内容はこのブログのカテゴリー「AR・VR・MR」をご覧いただければと思っています。
サービシンクがApple Vision Proのアプリを作る理由
2024年年末に、当社R&Dの専任担当である藤原がブログ「Webエンジニアが検証!Apple Vision Proで作った未来の製品マニュアル」や「A Web Engineer’s Experiment: Reimagining Product Manuals with Apple Vision Pro」で書いたように、Apple Vision Proのアプリを社内研究用に開発しています。しかし「未来の製品マニュアル」の記事をご覧いただいた方から、
「ヘッドマウントディスプレイを着けてマニュアルを見るのか?スマホでPDFを表示させればいいじゃないか?」
というご意見をいただきました。
そこで我々がR&Dとして研究しているのがどこを見据えているのかを改めて御紹介したいと思います。
私は「AR空間は今後の情報表示のディスプレイになる」と信じていますが、そして「AVPのようなヘッドマウントディスプレイでは絶対無理」だとも思っています。私が考えているARデバイスとは現在のスマートフォンの次世代のような位置づけの製品を想定しています。現在想像が出来ているその形は「メガネ型」です。
AVPやMetaQuestに代表されるようなヘッドマウントディスプレイは、それ自体を着けて外に出たり、あたかもスマホの代わりに使うということには程遠い製品です。実際当社ではAVPだけではく、MetaQuestも1〜3までのすべての製品を所有しております。使っていて分かりますが、MetaQuest3はMeta社もAVPを意識しているのかVRデバイスとしては維持しつつも「パススルー」という「外部の景色をそのままディスプレイに映し、あたかもディスプレイを着けていないかのような体験」を提供する機能を強く推してきました。しかし例えそれであっても、着けて外に出歩けば外部の人からは奇異の目で見られることでしょう。(私は実際AVPが届いた直後に、弊社至近の新宿御苑に赴き、AVPを着けたまま散歩をしましたが、一定の人にその姿を写真に撮られました…私には私を撮影している姿がくっきりはっきり見えているので、とても不思議な感じを覚えました(笑))
つまり我々にとって現在のAVPとは、下記の位置づけなのです。
- あくまで「AR表現をする」デバイスとしてやっと実用に耐える表現ができるデバイス
- AVPが表示・表現しているものが今後の「ARデバイスとして求められる最低の基準」になる
- 2024年発売のAVPの表現力を維持したまま如何に小型化していけるか?という「ARデバイスの進化」がやっと始まった
つまり、サービシンクが考える「AR表現」の最低基準がAVPでやっと実現できているのです。これよりチープなレベルの表現力では、一般の利用者は絶対にスマートフォンから乗り換えることはありません。
つまり我々は「ハードウェアとしてのAVP」ではなく「AVPの情報表現力」を使いたく、AVPのアプリを開発しているのです。裏を返せばAVP以外に現在我々が想像する「AR空間上の情報を表示してスマートフォンの代替になりえる」ハードウェアがまだ存在していないといえます。
メガネ型になった時のアプリをAVPで作っている
我々がAVPのアプリを作っているのは、そのアプリが「ヘッドマウントディスプレイ上で動く」ものではなく、近い将来「メガネ型」になり、多くの人が「日常的にメガネ型のARデバイスを身につける」ようになった時、「有益に使えるアプリ」という想定で全てのR&Dを行っています。
翻えれば、「Webエンジニアが検証!Apple Vision Proで作った未来の製品マニュアル」でご紹介してるAVPのアプリも、「メガネ型になり、日常的に時計やメールをメガネ型ARデバイスを通して見るようになった時代に、ふと家の家電を見た時、マニュアルが自然に浮かび上がれば便利だろうか?」という前提の元に開発をしました。
ですので「ヘッドマウントディスプレイを着けて使う人がいるのか?」という視点においては多くの人が疑問を感じるように我々もそれは実用的ではなく、使う人がいるとは思っていません。しかしそれが「メガネ型」になればどうでしょうか?まだ想像がしづらいかもしれません。しかし2025年1月にアメリカ ラスベガスで開催された「CES2025」へ赴き、現地視察をして最先端のARデバイスを視察してきました。(「CES 2025に見るWebとXRの展望」をご覧ください)
また2024年に発表されたMetaの「Orion」は我々の考える「ARデバイス」の姿に2025年4月時点で最も近づいている製品といえます。
そして実際この「Orion」は発売されることが示唆されています。「Orion」の紹介サイトにはこの様な記述があります。
Metaは、デジタルとリアルの間の壁をなくそうと日々取り組んでいます。
我々サービシンクは2022年よりVisionとして「Webの技術をリアルに広げる」を掲げています。Meta社の掲げている想いや見据えている未来と驚くほど酷似しています。
今まだ「Orion」を触ることはごく限られた一部の人だけであり、私もまだ実物をみることすら出来ていません。しかし彼らがやりたいことはしっかりと見えていますし、我々はソフトウェアデベロッパーです。彼らが作るハードウェアを元としてどの様なコンテンツを表示、再現、体験できるか?を考えるのが役割です。
現在AVPはAR的な表現力としては入手可能なものの中で間違いなく最高峰です。同様の製品であるMetaQuestは両方を触れば分かりますが「ARデバイス」として見た場合にはまだまだ敵いません。ですので、我々はAVPでのアプリを通して、メガネ型デバイスとしてAR表現が出来た時、を想像しながらR&D活動を行っています。
我々はこれまで長きに渡りインターネット空間にWebを作ってきました。そしてそれは世界中の人によって行われ、UGCを含め膨大な情報があります。AR空間が単純に3Dオブジェクトのみで成り立つ空間になるはずがなく、人類の叡智ともいえるWeb上のコンテンツは「AR空間で表現する」ことになっていくはずです。では「AR空間でWebコンテンツを表示」した時、何を考え、どの様なユーザー体験を提供していかなければならないでしょうか?これはまだ誰もやっていません。また誰もまだ分かりません。だからこそ我々Webデベロッパーであるサービシンクはそこに取り組んでいます。
私がインターネットを始めたのは1994年、そしてWebサイトを作ることを仕事として始めたのは1996年で、今年で30年目になりました。いま私は自社で行っているR&D活動の陣頭指揮を取っていますが、1994年に始めてHTMLでWebサイトを作ったときのようなワクワクを感じています。
世界でまだごく少数の人しか取り組んでいない「AR空間におけるWebサイトの表現」を考える活動こそが、我々のR&Dの根幹になっています。
今後もこの然るべき時期、つまり「メガネ型ARデバイスが一般化した時」のため、「AR空間に情報を表示させる」ことを考える活動を続けていきます。我々サービシンクのR&D活動の報告をぜひご覧いただければと思います。
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